若い賢者に耳を傾けて
2年前に引退した先輩が、年に1本だけ番組を作るためにオフィスに現れる。よく勉強している人物だが、最新の印象に残った本として、『大津波と原発』(朝日新聞出版)を上げた。1950年生まれの若い賢者3人による鼎談だが、読みやすくためになる本だった。昨夜ブックファーストで買って、3時間で読めた。いまもっとも関心のある原発についての捉え方だけでなく、その語り口の明快さにも乗せられて、速読できた。
3人の賢者とは、内田樹、中沢新一、そして平川克美だ。平川は内田の幼馴染で、二人でいくつか新書を書いている。この対談の仕掛け人は平川で、彼が内田と中沢に呼びかけた。
原発について、内田は前から懐疑的であった。その根拠は原発のようなハイテクを維持管理できるほど人間は賢くないという悲観があったからだという。いかにも内田らしい言い回しだ。
気になったのは、久しぶりに情況に関わってきた中沢新一の論だ。彼によれば、原子力エネルギーというものは化石燃料や薪などのこれまでのエネルギーと違って、われわれの生態圏のなかにあるものでないという。石油、石炭などは元は動植物でそれが太陽エネルギーを受けて化石になったものであったりして、われわれの生態圏内に位置づけられるが、原子力はそうはいかない。原子核から放出される巨大なエネルギーというものは、生態圏を一度も通ることなく生み出される。人間にとって外在するエネルギーだと中沢は警告する。しかも人類20万年の歴史のなかで、このエネルギーが利用されるようになったのはたった70年でしかない。火を扱う技術ですら何万年と時間をかけて、人類は手に入れてきたのに比べれば、あまりに短い時間。
この中沢の原子力の把握の仕方に刺激を受けた。今、何をなすべきかがはっきり見えてくる。誰ひとり責任をとれないような技術しかもたない人類が、超エネルギーを弄ぶとは、まさに「火遊び」でしかない。
そして、中沢は大胆な提言をしている。「緑の党」のようなものをつくろうというのだ。ドイツの緑の党のようなものでなく、日本の自然思想に立脚したものを作って運動していこうというのだ。何か、背中がむずむずしてきた。
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