映画期と小説期
無性に映画を見たくなることがあったり、エンタテイメント小説を読みたくなったりする時期がある。前者を映画期、後者を小説期ときどって名づけている。
今は小説期。一昨日から3つの中間小説を読んだ(1冊はまだ途中)。青山文平『白樫の樹の下で』、荻原浩『月の上の観覧車』、高野和明『ジェノサイド』の3本。
青山という人はこれが初めてだが、松本清張賞の受賞作で、時代小説なので読んでみることにした。剣術の極意、刀の値打ちなどを知悉していて時代小説としても安心して読める。が、藤沢周平のような味わうような文章でなくストーリーを追う読み方しかできなかった。青山文平の生年は私と同年。経済関係の出版社に18年いてライターとして独立したと、奥付にある。どんな経緯で、時代小説を書こうと思ったか聞いてみたいものだ。
荻原は以前『明日の記憶』を読んで感心した。若年性痴呆の主人公の物語であったが、せっぱつまった感情がよく表されていて、読むうちに身につまされていったことがある。お話のうまい人という先入観をもってページを繰った。8つの短編が収載されたオムニバス本。文章はうまいが、いささか物足りない。巻頭の「トンネル鏡」だけは心にしみた。
そして高野の新作。息子が面白いから読めと置いていった本だ。590ページもある長編。明け方から読み始めて3分の一まで進んだ。人類を滅亡に追いやるかもしれない新型ウィルスとの戦いというパニック小説。近未来のSFで、どちらかといえば苦手な分野だが、専門知識が充実した記述で飽きさせない。巻末に参考文献が30以上挙げてあるのを見て納得。最後まで読んでみないと何もいえないが、浦沢直樹の「20世紀少年」のようなテーストだ。うちの息子はこういうのが好きなのかとひとりごちながら読んでいる。
この週末に読む予定にしているのが、ポール・オースターの『ムーン・パレス』。これは京都の古本屋の店頭で100円の値札を見てすぐ買ったもの。得をした気分だ。柴田元幸の訳で1994年に出た作品。
島田荘司『追憶のカシュガル』。これは新刊。冒頭に京都の百万遍にある進々堂の喫茶店から始まることを知って即購入。この人のミステリーはひねりがいくつもあって好きだ。
乃南アサ『禁猟区』。この人の描く警察社会はリアルで好きだ。これも警察小説。
と、こんなことをしていると、土日は資料も読まずに、日曜夕方の「笑点」になってしまう。
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