大名跡 延寿太夫
三田完の新作『草の花』。昭和10年に大連に赴任した女医、新進の科学者と結婚したが流産した新妻、6代目菊五郎の妾となった芸者。この3人の人生が戦禍と複雑にからむ物語。この3人の趣味は俳句。同じ句会に参加している。つまり、これは俳句小説の趣向なのだ。作者自身、知水という俳名をもち、結社にも属しているだけあって、小説内俳句もよく練られている。タイトルにもなった草の花の一句、
うれひなき地蔵のおはす草の花
自注がついていることもあるが、気張らずにはんなりとした味わいの佳句だ。
作中でドキッとしたのが 延寿太夫という名前。大正から昭和の始めまで一世を風靡した五世のことが句に詠まれているのだ。
松の花 延壽太夫の 声ぞ佳き
寿は本当は壽と表記。ここでは略字にしているが、今の延寿太夫の祖父にあたる人物のことを句にしているのだ。
この五世はなかなかの教養人であったようだ。速水御舟の蒐集家でもあった。あの有名な屏風図の「菊花之図」を所有していたという。今回、取材していて知った。
ところで、この『草の花』の作者の来歴を見ると、テレビのディレクター・プロデューサーとして活躍とある。どんな番組を作ってきた人なのだろう。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング