レゾンデートル(存在理由)
澁澤龍彦は59歳で死んでいる。友人の出口裕弘は「澁澤の死は立派ではあったけど、やはり,かぎりなくいたましい」と記している。出口の友情は分かるが、澁澤のような人物は果たしてどうだろうか。
若いときから、肉体はオブジェにほかならない(養老孟司)と考えているような人物だったから。澁澤にとってみればちょうどいい頃合だったのじゃないか。と、ファンとして贔屓の引き倒しを夢みてしまうが。
でも、なんでこの世に現れてきたんだ?そのレゾンデートルは何であったのだろう。
柳澤桂子の歌集「萩」を手にした。私より10歳上、現在73歳の科学者。若い頃から生命科学の研究者として活躍し、子供も得たが、45歳のとき発病して闘病生活に入る。難病ゆえ、解決法もなく苦しみを生き抜きながら、科学エッセイストとして人を励ましている。その人の短歌。
今生は病む身に耐えて生き抜こう後生は白い椿になりたい
今までが仮縫いならば来世はげに美しき一生(ひとよ)を生きん
かかえている苦難は、私などの想像のつかない。それでも柳澤は自分を諦めない。そのことが他者を励ます。
生きるという悲しいことをわれはする草木も虫も鳥もするなり
大雨のなか、目黒川沿いの図書館へ出かけた。川そばの桜並木は青々と美しく、目黒川に雨が降り注ぐ。
萩の茂みが雨に濡れてさみしげだった。柳澤も雨の萩を詠んでいる。
雨露に深くうなだれ萩の葉は自らに問う存在理由(レゾンデートル)
病と闘いながら柳澤さんはサイエンスライターとして、数々の名エッセイを残している。今、科学ライターとして、原発被害について生命の側から発言している。
病むほどに我が輪郭は濃くなると信じていたい意味はなくとも
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング