梅雨入りの京都
ひと月ぶりに京都へ来た。雨もよいでやや寒い。百万遍まで来るとぽつぽつ落ちてきた。
京都をはじめ西日本は今日から梅雨入りしたと、テレビが伝えている。
生協のルネに入って、書店をひやかす。大学の書店は一般書店では見られないような本がいくつもある。興奮する。
12時を回ったところで、主任教授のS先生の部屋をのぞくと、昔の同僚がいた。彼女は40歳ぐらいまでディレクターをやっていたが、その後大学に戻り留学をして、今では関西の私大の助教授だ。すごいのは、二人の子供を育てながらのキャリアの形成であるということ。いっしょに机を並べたなかだから、話は弾んだ。
13時になり講義室に向かう。ミニ番組を制作する授業。今年は3つの企画を採用した。
1つは、馬術部の主将の最後の試合、2つめはK名物教授の山登り、3つめは学食に出店したケバブのトルコ人従業員。どれも面白そうなネタだ。
授業にあたり、最近の私の仕事を紹介することから始めた。来週放送の美術番組「極上美の饗宴」の作業のこぼれ話から始めた。
一昨日行った音録りのこと。
吹き替え作業のとき愉快なことがあった。イタリア人学者の声を葺き替えてもらった声優さんがスタッフからサンデルと呼ばれていた。理由を聞くと、ハーバード白熱教室で話題を集めたあのサンデル教授の声を担当した人だった。あまりにあの役にはまったので、最近みんなからひやかされるのですよと照れている。
当のサンデル教授本人も、日本で制作された番組を見て、自分の声の吹き替え者がとてもはまっているので関心をもった。年齢はいくつぐらいか、どんな性格なのかと担当のディレクターに尋ねたそうだ。どうやらスマートに描かれ、ダンディな声で吹き替えられていることにご満悦だったようだ。
先月、最新版の白熱教室が総合テレビで放送された。中継スタイルで、大震災についての講義だった。
その番組のなかで、前回放送された日本語版が紹介された。それを見たあと、教授は自分の声の吹き替えをやっている声優の卓越した技術を褒めた。それを、また吹き替えで声優は語るのだが、語りながら自分のことを自分で褒めるなんてと複雑な気持ちになったと苦笑していた。
ところで、仕上がった番組は予想以上に面白いものになった。数日前までかなり“出来”を心配していたのだが、構成も大胆に変更し、表現も平易にして、分かりやすくなり、メッセージもはっきりしていい番組になった。午後8時過ぎ、作業が終わったとき思わず大きな吐息がもれた。安堵したのだ。
5月30日放送 BSプレミアム 極上美の饗宴
「追跡!カラヴァッジョの幻の名画 深い闇と激しい光の謎」
カラヴァッジョは1600年ごろローマで活躍した人物。それまでの画とまったく違う光と影の強いコントラストにドラマチックな群像を描いて、当時の民衆の心を掴んだ。一方、激しい性格の彼は仕事を終えると紅灯の巷を徘徊し、喧嘩と漁色に明け暮れた。ついには決闘から人を殺し追われる身となる。ローマ教皇にも届く盛名と殺人者、カラヴァッジョという人は複雑。一筋縄ではいかない。
四百年間行方不明だった、カラヴァッジョの「キリストの捕縛」が1992年アイルランドで発見された。この作品は彼の全盛の頃に描かれたと伝説があったものの、その行方は知れなかった。存在そのものも疑われた。なぜ行方が消えたのか、どうやって再発見され、存在が確認されたのか、その謎を解いていくうちにカラヴァッジョの画の魅力が浮き彫りになってくる。ヒントは自画像。詳しくは番組をご覧いただきたい。
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