光と闇の人生
再来週の放送のカラヴァッジョのコメントを直している。今度の火曜日がコメント入れなので、最終チェックだ。語りは今売り出し中の井上二郎アナ。大河ドラマの前説などで話題を集めた。彼のソフトで重厚な語りにふさわしいコメントに仕上げなくては。
取材班はこの4月にイタリアとアイルランドに出向いて、カラヴァッジョの幻の名画を追跡してきた。400年間所在が分からなかった画が、ある女子大生の手によって判明していくという物語。まるでドラマだ。実際、この話はあまりに面白いので、『消えたカラヴァッジョ』というノンフィクション本にもなっている。
カラヴァッジョが活躍したのは1600年前後。日本でいえば徳川家康が江戸に幕府を開いた頃だ。ミラノからふらっとローマへ出てきたカラヴァッジョ。まだ貧しい20代の若者だった。それでも才能があったのだろう。彼が描いた「女占い師」が高貴な人物の目にとまり、世に出て行く。しかし、変な題材を選んだものだ。この頃の作品には「いかさま師」というのもある。カラヴァッジョという野望と虚栄に満ちた男の「デビュー」にふさわしい作品ではないか。
画家がその作品のなかに自画像を入れるというのは珍しいことではないが、カラヴァッジョほど確信犯的に描きこむ作家もいないだろう。けっして美男子でもないし高貴な顔でもない。むしろ悪相だ。太い眉、黒目の大きなイカガワしい眼差し、苦悩をかかえた額に垂れ下がる髪、無頼なヒゲ。いかにも悪い男だ。実際、彼は後年人を殺して追われる身となるのだ。
ところが彼の描いた世界は栄光に満ちている。コントラストのきつい光と闇に浮かび上がる劇的な群像。汚れた裸足や深い皺などをリアルに描きながらも、見るものを縛り付けるほどの深い世界を、この無頼の男は作り出したのだ。調べれば調べるほど謎に満ちた画家、カラヴァッジョ。
2010年は彼の没後400年だったから、いくつもの発見があった。もっとも有名だったのは彼の遺骨が見つかったことだ。彼の最後の地となった港町ポルト・エルコレ。そこの埋葬地の地下から発見された。その骨を鑑定した結果、いろいろな病気をもっていたことが判明するが、梅毒にかかっていたということは、彼の荒廃したくらしぶりが分かるというもの。
今制作の番組はこの稀代の奔放な画家のある秘密を解いていく。その過程がめっぽう面白い。御期待を乞うといったところだ。
題して、「追跡!カラヴァッジョの名画 深い闇と激しい光の謎」
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