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今こそ『治療塔』

ラストピースの私たちは

『治療塔』の文庫本をジュンク堂渋谷大型店で見つけ、思わず手にとった。
この小説が単行本になって売りに出された1989年頃、私は大江さんに会った。文芸誌「へるめす」で、「再会、あるいはラストピース」として連載が終わり、ちょうど単行本として出版されたばかりであった。その余韻というか戦いを終えたあとの余熱のような荒ぶるものを、氏はひきずっていた。
氏の眼前に出たのはテレビ番組の出演と構成のお願いがあったからだ。「世界はヒロシマを覚えているか」というスペシャル番組を構想していた。大江さん自ら出演し、番組を構成するという新しい番組を目指していた。
冷戦の末期に東西両陣営の知識人たちと出会い、広島をめぐって対話するというドキュメント。誰と会うかということが私たちの話し合いの主眼点となった。
そこで大江さんから出てきた名前は、ル・グインでありストルガツキーでありスタニスワフ・レムであったことは、この『治療塔』というSF小説と関係がないことはない。

『治療塔』が氏の初めてのSF作品ということで、SF談義になった。SFファンには評判が悪くてねと言い訳しながら、まったく意に介さない態度を見て、氏は作品の「上がり」に満足していると感じた。私は、『治療塔』と続編の『治療塔惑星』を読み、そこに描かれた治療塔のイメージに引かれた。
〈「新しい地球」の地衣類しか生えていないエンピレオ高原に治療塔は並んで建っていた。秋田のカマクラに似た形状。固い合金のそのほこらに入ると、体が発光する。その光はどこかから来るのでなく、体の内部からぼーっと照りだす。このほこらで横になって休んだあと出てくると、負傷が治癒するという装置――治療塔。〉
これをいかに映像化するかということを腐心した。大江さんの頭のなかには、タルコフスキーの映画「ストーカー」のような深い映像のイメージがあったようだ。

今回、鉛筆を片手に書き込みをしながら『治療塔』を読み直して感動した。まさに、今ここにある危機が描かれているではないか。目がくらくらするほど、現在の日本の状況と小説が重なる。核事故後の荒廃した地球。そこを見捨てて、新しい地球を目指した100万人の「選ばれた者たち」。そして古い地球に落ちこぼれのようにして残された「残留者」。対立の構造は、今この国で表立っては現れていないが、沈潜している。この小説はそういうものを先取りするカタチで描かれているのだ。
セレブたちが関西へ移住していると噂を聞く。地震の恐怖に加えて、原発事故による放射能汚染を恐れ、西日本へ移動している。その一方で棄民のようにして故郷から追い出された原発周辺の住民がいる。『治療塔』のなかで混乱期と記された状態と酷似している。
小説のなかでは、やがて残留者たちは放射能の危険にさらされながらも、生産方法の見直し、社会の仕組の再構築を進め、解決をゆっくりながらも図っていく。穏やかに生活を再建していくのだ。ここに何か救いを感じる。たとえ、核の事故で地球が大きく荒廃しても、人間は生き延びるという希望を読みとることができる。小説とは、人間を根本から励ますものでなくてはならないとする、氏の信条が透けてみえる。

だが一方で、汚染された地球を見捨てて宇宙に出て行ったにもかかわらず、再び帰還してきた「選ばれた者たち」の救いがたさにショックを受ける。「人間トイウ意識ヲソナエテ、浅ハカニモノヲ考エ、マコトニ多クノモノヲ造ッタリ、サラニ多クヲ壊シタリスル生物ガ必要ダッタノダロウ?」と“高い意志”をもつ超越した存在が疑問をもつ人間存在。私たちはそういう存在でなく、ラストピース(最後の作品)として手直しを加えられながらも生き延びる存在となれるだろうか。
この小説の最初のタイトル「再会、あるいはラストピース」とつけられたことに、再度思いを致すのであった。


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by yamato-y | 2011-05-18 17:08 | Comments(0)
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