長い付録
山科に住む大先輩のHさんを訪ねた。今年72歳になる。大阪時代にずいぶん世話になった。当時から山科に住んで大阪梅田までの遠距離通勤をしていた。興がのると、私を連れて梅田から山科の自宅まで突撃した。突撃の対象は、共働きの奥さんである。深夜に帰って、それからまた宴会となった。朝が早い奥さんは、さっさと寝床につき、HさんとHさんのお母さんとで夜遅くまで飲んだ。
Hさんは54歳で退職した。その後、大学に行きなおして、大学院まで続けた。滋賀大学の経済学部。彦根にキャンパスがあって、山科から毎日通った。3つ下の奥さんも、同じ年齢になったとき退職して、こちらは神戸大学の大学院に通学するようになった。よく、そんな年齢で勉強するものだ。二人とも立派な修士論文を書いた。
60歳になったとき、学業もすべて終えて、まったくの素浪人になったと「自慢」する。
60歳から72歳の今日までどうしたのですか、と聞くと、Hさんは「週休7日の生活」とこたえた。うへえ、たいしたものですね、毎日退屈もしないで12年間くらしてきたとはと半畳を入れた。いつも泰然としているHさんだから、カンラカンラと笑いとばすだろうと思っていたら然にあらず。マジな目つきでこう言った。
「本誌より長い付録というのは困ったものだ。これからの日本人はどうやって長い老後と付き合うかがかなり大きな問題だよ」人類がこれまで体験したことのない状況に入っていくと深刻な顔で打ち明けた。いつも話しをはぐらかす人だから、こんなマジメな顔で返されるとこちらがドギマギしてしまう。
長命が寿というわけでもない時代になったのだ。だからといって、長命が不善というわけでもないが。
そういう話で盛り下がっている最中に、奥さんがやってきた。Hさんと違って、奥さんは意気揚々。現役時代より数キロ体重が増えたようだ。顔の色艶もいい。それを指摘すると、奥さんは「毎日が日曜日ですから」とノンシャラン。女は強い。
5月に京都へまた来ますからと告げると、二人は顔を見合わせている。「生憎、留守しています。お会いできなくて残念ですね」と奥さん。5月連休過ぎから二人で北欧3国へ行くそうだ。フィヨルドのクルージングの旅に出かける。なんと優雅なことか。やはりHさんらしい。
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山科駅前のしだれ桜