王様のスピーチ
出がけに大きな余震があったので心配したが、銀座4丁目はいつもの雑踏があった。日比谷の映画街に立ち寄った。
旧知の少年サンデー編集長の姿を見かけたので声をかけると、「探偵コナン」の封切り挨拶にやって来たとのこと。入りも去年に比べても悪くないのでと嬉しそうな声だった。春のアニメ祭は今年も好調だ。やっぱり映画は興行ということが大きな意味をもつ。制作のエネルギーの30%は興行に注がれる。テレビは3%もない。
映画街のなかで、ひときわ大勢の観客が集まっていたのが日比谷シャンテ。3時5分開演はもう売り切れて、3時40分開演分が20席しかないという。何の映画かとのぞくと、オスカー賞受賞した「王様のスピーチ」。話題の作品だ。3つのスクリーンのうち2つをこの映画に振り向けている。行列の熱気に押されて切符を買った。
イギリス王室の話。ヨーク公(コリン・ファース)には人前で上手く話すことのできない吃音という障害があった。いろいろ治療を試みるがうまくいかない。そんなとき、豪州出身の言語聴覚士のライオネル・ローグと出会う。次男だったヨーク公だが、父の跡を継いだ兄が退位したため、王位を継ぐことになる。おりしもヒトラーが台頭し、対独戦の緊張が高まっていた。
そして、開戦の日、彼はマイクに向かって戦意高揚のスピーチをすることになる。吃音を乗り越えて、うまくいくだろうか・・・。というストーリーだ。
ロイヤルファミリーのちょっと良い話という映画。少ない登場人物とシーン。歴史に題材をとった手法。なんとなく「イル・ポスティーノ」の結構に似ている。悪くはないけど、連日満員になるほどの映画だとは思えない。
と不満を、後刻もらしたら、映画好きの先輩が、主人公をヨーク公より駆け落ちした兄のウィンザー公にすれば面白いはずだがと呟く。ウィンザーはハノーバー朝系の流れだからゲルマンに親近を感じていたりして、ヒトラーに対しても宥和的だったそうだ。彼がそのまま王位にいれば英独間も違ったものになったかもしれないと、先輩は蘊蓄を語る。チェンバレン、チャーチルらが活躍していた時代というのは、世界史でもざっとしか習っていないからほとんど知らない。そんなものかと先輩の博学に畏れ入った。
ところで、映画を見ているときの私の気分は、実はよくなかったのだ。
会場は満員だったから、私が指定された席は最前列の中央しか残っていなかった。首を大きく上げて目の前のスクリーンに臨むことは不快を感じた。途中で、トイレに立った。
トイレの窓からビル街が見えた。ふと、今地震が起きたらと考えると恐怖が湧いた。
会場いっぱいの客たちが四階のシアターから一度に動いて出口に殺到したらと考えると、客席に戻るのを躊躇した。
だが、映画はまだ半分しか進行していない。途中で放り出すのは嫌だ。席に戻った。
こうなると、気持ちが集中しない。気もそぞろになって、物語の筋を追うのがやっととなった。
こんな鑑賞だったから、映画の評価が低くなったのかと、稍反省。
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