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浅野川のほとり

浅野川のほとり

私が大学へ入った頃にはもう五木寛之は金沢を去っていた。
1年の終わり頃になると、大学の講義をさぼって香林坊あたりで喫茶店にもぐりこむようになっていた。2時間も3時間も、コーヒー一杯でねばり、いっぱしの文学論を語っていた。そこのマスターは気のいい人で、店が混んでも追い出すようなことはしなかった。あるとき、ぼそっと言った。「あんたらが坐っている場所に、いっつも、五木さんがおったがいや」。それまでトルストイの人道主義をめぐって大きな声で議論していたのが恥ずかしくなって早々に退散した。彼が早稲田の露文中退ぐらいのことは知っていたし、どこで彼の友人にでも聞かれているかもしれないと思うと怖気づいたのだ。喫茶店の名前は、ローレンスといった。白亜の美しい喫茶店だった。後で知ったのだが、五木寛之はこの店で直木賞受賞の報に接したそうだ。

古い小説現代に、五木は「小立野刑務所裏」という短編を寄稿している。それを、今朝寝床のなかで読んだ。
昭和42年当時、五木は小立野台地の端にある東山荘という風呂なしのアパートに住んでいたそうだ。確かにあの辺りに刑務所があった。台地のテッペンにあったから、そこから道を下ると浅野川の段丘に出た。10分ほど歩けば浅野川のほとりに出る。五木は短編のなかで、その浅野川界隈を描いていた。読んでいるうちに懐かしさがこみ上げて来た。

金沢には犀川と浅野川という2本の川が流れている。流域も広く水量も多い犀川は男川、流れの穏やかな浅野川は女川と地元の人は呼んでいた。浅野川は加賀友禅の水洗いでも知られている。近年、浅野川が氾濫して大水害を起こしたと聞いたときは、あの優しい川がと驚いた。私は浅野川派である。

その川に天神橋が架かっている。卯辰山の入り口にある鉄の橋だ。対岸には東の廓の家並みが見える。下流を眺めると、その頃は浅野川大橋が見えた。今では、2つの橋の間に梅の橋という木橋が架かっている。その梅の橋の上手に北国第1劇場という洋画専門の映画館と北国シネラマ館という邦画専門館が並んであった。
シネラマ館ではときどき実演も行われた。41年ごろ、グループ・サウンズ全盛でスパイダーズのショーがあった。「夕陽が泣いている」を歌う堺正章が格好よかったことを覚えている。会場は満員で、人いきれでむんむんした。
一方、洋画の第一劇場はいつ行ってもがらがらだった。「ドクトル・ジバゴ」を第1劇場で見たことを覚えている。せつない「ララのテーマ」が閑散とした客席に流れていた。映画の時代が終わり、テレビの時代に移ろうとしていた頃の話だ。今では2つの劇場はなくマンションが建っている。

2つの劇場の下手に並木楼という料亭があって、いつも2階の窓が開け放たれていて、賑やかな音曲が聞こえてきた。八郎鮨、黒梅木工、そしてお菓子屋があった。その横に細い路地があって小粋な板塀が奥まで続いていた・・・。
さらに川沿いに下ると、浅野川大橋のたもとに出る。角にト一亭というすき焼き屋があった。前に国道159号線が走っていた。その広道を渡ると、金沢の廓のひとつ主計町にはいる。

 主計町のお茶屋が並ぶなかに鍋料理の専門店太郎がある。学生の身分ではなかなか行けるものではなかったが、茶道の師匠がときどき連れて行ってくれた。冬の鍋は美味で最高だった。太郎は今も健在だ。その主計町の路地に入りこむと質屋がひっそりとあった。その前の石段を上がると、久保市さんと呼ぶ久保市乙剣宮となる。神社の前に泉鏡花の生家跡があった。表の電車通りには和菓子の老舗森八があった。

電車道をはさんで、一軒の古本屋があった。五木はその店のことを、「眼鏡をかけたご主人が、今にも崩れそうな古本の山のかげに、ひっそりと座って本を読んでいた」と書いている。その古本屋の隣にレコード店があった。
私はそこの小学生の次男に家庭教師として2年間教えた。教えるというより遊び相手のようなもので、久保市のお祭りなどには勉強をさぼって繰り出していた。あの坊やも今では50過ぎの親父になっているのか。

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浅野川のほとり_c0048132_1882225.jpg
ト一亭があった場所に、今は櫓が建っている
by yamato-y | 2011-03-09 17:34 | Comments(0)
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