春の雪
今朝の思いがけない雪を見て、先日大阪で会った人のことを思い出した。
「今年は雪が多いから山の家の煙突が2回壊れました」と、ほっこりした顔で呟いていた。
7時に起きたときは雪はなかったが、8時を回っていやに冷え込むなと思って窓外を見ると大きな雪が矢継ぎ早に落ちていた。東京は3月になってから降るということは承知していたが、昨日の陽気に騙されて、今年はもはやないと思い込んでいた。それだけに寒さがこたえる。
大阪の友人は飛騨高山に別荘をもっている。独身だから、ときどき深夜車を飛ばして行く。むろん、雪のない夏とか秋とかの話であって、冬はない。だが今年の大雪は家を痛めつけているので時折点検に行くことが増えた。煙突が2回も折れるぐらいだから、きっと家の屋根や梁も傷んでいるにちがいない。
出社途中で、「たつみ」の店があった場所で写真を撮った。ビルは壊されて今は駐車場となっている。店は2階にあったから、今はまったく偲ぶよすがもない。その不在が雪によって際立つと思ってレンズを向けた。
このブログを始めた頃は、定年という終末を迎えたという熱い焦燥感があった。お前はもう終わったと、誰かから引導を渡されたと感じていて、じたばたと動き回ることで抵抗しようとしていた。心中の虫のようなものが吼えていたような気がする。
今は・・・。
気がついたら咆哮は鎮まっていた。焦りに似た苛立ちも消えている。ようく調べると、諦めというものが心の真ん中にぼんやりと居座っている。もういいじゃないか、軀だって自在にならないのだ。ましてや精神まで勢いを失うのは当然だ。ときどき、仕事がトラブるときだけ癇癪を起こすことがあるものの、平時は惰弱な熟年でいいか。
というような気分になっている。
春の雪は大粒のくせに、地表につくやいなやで消えしぼんでいく。淡雪と呼ばれる所以だろう。見かけほど寒くはないということか。本当にシバレていれば雪は降り積もるのだから。見掛け倒しの雪。
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