映画の日々
金曜日の夜に、この週末はぜったい映画だけを見てやろうと決心した。仕事用の資料読みとか読書を外して、映像特に劇映画の映像に専念したいと思って、DVDを5本準備した。そして、3日間ぶっ続けで見た。見た順番にタイトルを列挙する。
「トウキョウソナタ」黒澤清監督作品で、わりと近年のものだ。曲者の黒澤が作るのだから一筋縄ではいかぬと思って見始めたが、意外に分かりやすいので気がぬけた。題名通り、冬ソナを意識しているのは言うまでもないが、たいして大きな意味を与えていない。冬ソナをパロっているなと気づいたのが、映画後半で出て来る海辺のシーンだ。別離を決意したチュンサンがユジンを連れて夜の海辺に行く。車が汀の近くまで進入するのは、見たときどきっとしたが、この場面を黒澤は巧妙にとりこんでいた。そこでは、強盗役に役所広司が登場するから、実は相当気合が入っていたのかもしれない。たしかに、此の映画のひとつの落としどころになってはいるが、だが取ってつけたような「社会批判」だった。立教派といわれるこの監督の作品はこれまで一度も感動したことがないが、今回もそうだった。唯一驚いたのは、小泉今日子の演技。まなざしが凄い。
2本目は「LAコンフィデンシャル」。前に一度見たのだが、しっかり読み込んでいなかったので、今回は気を入れてみた。面白かった。ケビン・スペーシーはなんてうまいのだ。今の日本映画界にはいない。昔なら加東大介だろう。キム・ベイシンガーの美しさは最高。
アメリカンミステリーのよく出来た作品というのは、後味がいい。すっかり、クライムストーリーにはまったので、次もまた選んだ。
「新・動く標的」。ポール・ニューマン主演の80年代の映画。正編の「動く標的」はおもしろくなかった。だから続編には関心をもたなかったが、ある映画批評で、激賞していたので、あえて見ることにした。その評価は間違っておらず、これも面白かった。意外な拾い物だった。
陰謀の裏に石油利権がからむというパターンは、「ペリカン文書」などで使われて好きな仕掛けだが、その源流はこのあたりから始まったのかな。南部の退廃した空気感がいい。
4本目は邦画「麻雀放浪記」。真田広之主演、和田誠監督の作品。玄人に受けがいいと聞いていたので、見た。画像はモノクロでなかなか重厚だと思うが、脚本がよくない。なんだか、間がまったくとれていないのだ。前半の芝居が特にそうだった。名古屋章、加賀丈史とうまい俳優と言われている人たちがそれほどでもない。加賀まりこもそうだ。なんか余りにキャラクター通りに演じているのだ。高品格という役者だけ惹かれた。脚本に澤井信一郎が和田誠と名前を連ねている。娯楽映画で評価の高い人物だが、これってどうなのだろう。阿佐田哲也の原作の面白さがあまり生きていないと思ったが。
そして、日曜の夜に3時間の映画を見た。ウィリアム・ワイラー監督「我らの生涯の最良の年」。1946年、戦争が終わった翌年の映画だ。帰還兵3人の身の上を描いた作品。アカデミー賞を受賞しているだけあって、最後まで見せた。
傷痍した帰還兵が市民からお前たちが闘っていた相手が違っていたとなじられる場面。ナチや軍国主義より共産主義を倒すべきだという風潮が描かれている。戦争が終わって1年しか経たない段階で、もう逆コースが始まっていたのだということを知った。
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