ローザ
1985年に制作された独映画「ローザ・ルクセンブルク」を見た。監督は女性のマルガレーテ・フォン・ロッタ。素晴らしい才能だ。ジャーマンシネマの旗手のひとりとかつて評価されたのだが、近年、その名前を見かけないのはなぜだろう。そろそろ新しい作品を見たいものだが。
主人公のローザとは、ポーランド生まれの革命家でドイツ社会民主党から独立社会民主党を経て、ドイツ共産党(スパルタクスブント)を結成した伝説的な女性。
第一次世界大戦末期ドイツ帝国は革命によって崩壊。ドイツ共和国(ワイマール共和国)が誕生する。ローザたちは更なる革命を進めるべく蜂起するが、やがて殲滅される。敵対するファシストによって虐殺され、運河へ投げ込まれてしまう。この数奇な運命を力強く生きた女性を描いたのが、本映画だ。
1907年、ロシア革命が起きた。そこに居合わせたローザは祖国ポーランドにまでその火を広げようと活動し逮捕され、ワルシャワ監獄に投獄される。(彼女は短い生涯のなかで9回も投獄されることになる)
その頃、ドイツ社会民主党は新しい時代のなかで躍進途上にあった。ドイツに帰国したローザは、議会民主主義路線をとる党のあり方を批判し、ゼネストの戦術を主張する。革命を徹底させようとするのだ。
第1次大戦で敗北したドイツは、莫大な賠償をかかえ逼迫しており、国民のなかでその不満は新しく台頭してきたファシストの勢力に吸収されていく。新しい戦争の危機が迫っていた。それに対して、ローザは反戦をつよく主張する。一時、袂を分かった急進派のカール・リープクネヒトと再び手を結ぶ。だが、二人は反対勢力の憎悪をさらに掻き立ててもいく。二人への追求が厳しくなった。そして――
1919年1月15日、逃走をはかったローザとリープクネヒトは、彼らを憎む軍人たちにつかまり、射殺される。映画では、この場面がリアルに描かれている。
拉致された車のなかで、ローザは小銃で射殺される寸前、一言発する。「撃たないで」
このセリフの翻訳が気になった。原文はそうなっているのだろうか。撃たないでというと、まるでローザが下手人たちに哀願するような屈伏したようなニュアンスがある。果たしてそうだろうか。ローザは信念の人であり、この拉致されたときにはもはや覚悟していたのではないか。死を恐れずに自分の存在を誇示したはずだ。だから、軍人がピストルを向けたときには怯むこともなく、彼女は毅然と対手を制したと、私は想像する。「撃つな」と。下手人たちを憐れみ見下ろすような精神で言ったにちがいない。
血だらけのローザと敵からでっち上げられた彼女は、実際には子供好きの愛情深い女性だったとして、この映画では描かれている。そのことに私は好感をもった。が、それだけにあのセリフの訳だけが気にいらない。
先日、永田洋子が死んだ。鬼畜のような女と喧伝されたが、果たしてどうなのだろう。
まぼろしはすみれいろかや反逆者(テロリスト)
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