素敵な漫画家
昨日は休暇をとって京都の大学に来た。科学研究「戦争の記憶」の2月の研究会に出席するためだ。今回は、ゲストを迎えてのインタビューである。漫画家のこうの史代さんだ。2004年、『夕凪の町・桜の国』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞と手塚治虫文化賞新生賞のダブル受賞をはたした人物。メディア論的戦争の記憶研究する私たちにとってきわめて重要な人だ。今回、東京からお呼びしてメンバー12人で、こうのさんを囲んで、話をあれこれ2時間にわたって聞いた。
午後3時、京大正門、時計台の前でこうのさんと合流。この大学は初めてということでキャンパスを少しだけ案内する。高校生の頃、吉川幸次郎が好きで、この大学へ行こうと考えたこともあったそうだ。だが、女の子は地元の公立しかやらないという親の方針で、こうのさんは広島大学の理学部に進学する。なぜ、理学部の地学?という疑問に答えるかのように、キャンパスグッズの売店でこうのさんが求めたのは、元素の周期律表だった。「これが一枚あると便利ですからね。一家に一枚、周期律表」とにこやかなこうのさん。寒い京都を警戒して、長いコートをまとい帽子にマフラーで完全武装。帽子の下のまなざしが優しい。
4時から、特別研究室の狭い部屋に13人がぎゅうづめになりながら、こうのさんの言葉に熱心に耳を傾けた。前半のこうのさんの半生については、私がインタビュイーで、後半の代表作『夕凪の町・桜の国』や『この世界の片隅で』のマンガについては、京都精華大の吉村和真先生が中心になって、こうのさんから創作の「秘密」や戦争の記憶に向き合う「姿勢」などについて聴くことになった。明晰で明快なこうのさんの話は面白く、2時間があっという間に過ぎた。
6時15分、研究会を終了。場所を百万遍の「門」という小料理屋へ移す。全員で大学を出て、小雨のなかわいわい言いながら移動。そこで、こうのさんを囲んでの懇親会となった。関西の有名な大学の教授や准教授たちは、口角泡を飛ばして、戦争の記憶論を弁ずる。こうのさんはにこにこ笑って、それに応ずる。ここでも楽しい2時間は、あっと言うまに過ぎた。
会のお開きの前に、「こうのさんのサインタイム」と私が声をかけると、『夕凪の町・桜の国』の単行本をもってメンバーが並ぶ。サインだけでいいですよと、私は言ったが、こうのさんは一々可愛い小鳥を描いてサインしていた。むろん、私もいただいた。
その後、宿泊先のブライトンホテルまで送り、そこのバーでまたこうのさんと話し込んだ。
聴けば聴くほど、『夕凪の町・桜の国』の作品の深さに驚く。
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