私の心を 持って行ったから
とうとう冬ソナを全部見なくてはいけない羽目に陥った。この連休の最初に、いくつかDVDを準備しておいたのだが、雪が都心を直撃した日から無性に此のドラマを見たくなり、ちょっと触りだけと思って、本棚の隅に隠しておいた冬ソナDVDセットを引っぱり出したことが、すべての始まりであった。おそらく、水曜日頃までかけて最後の第20話まで見ることになるだろう。
今日現在、第10話「決断」まで来た。ユジンは本意でもないのに、心を病んだサンヒョクの傍らにいることになってしまう、あの話だ。この回の最後が、冬ソナアンケートでも、好きなセリフ第2位のあれが出て来る。そこを、つい楽しみにして深夜遅くまで画面の前に居座った。
ソウルのサンヒョクの元に帰る前に、スキー場の雪の公園で、ユジンはミニョンに告げるあの場面だ。
「私、ミニョンさんにはごめんなさいなんて言いません。だってミニョンさんは私の一番大事なものを…私の心を 持って行ったから。
だからミニョンさんには謝りません。(長い間)愛しています」
「謝りません」から「愛しています」までのサイレンス(間)がすごい。およそ7秒はあるだろうか。まったくのノンモン(音なしという意味)だが、目はすごい芝居をしている。ユジンの熱い気持ちが伝わって来る。
と、夢中になって見ているのは、我が社から発売しているDVDセットだ。最初、VHSのビデオセットを購入したのだが、嵩張るということで、敦賀で一人暮らしをしていた母に譲り、私はDVDセットにしたのだ。
最初は、見るのを渋っていた母も、一度見ると、みるみるはまった。一昨年に他界するまで、母の趣味は短歌と韓流になった。今振り返ると、冬ソナのビデオセットをプレゼントしたことは、少し親孝行をしたことになったかなと思ってもいる。
このドラマを通して、それまで行き来のなかった近所の女性と、母は友だちになった。Yさんは60代後半の一人暮らし。回覧板を持ってきたときに、母は冬ソナを見ていて、そこから交流が生まれた。
年金暮らしのYさんはビデオもDVDも持っておらず、ときどき放送される冬ソナを楽しみに見るという人だったから、母のビデオを羨ましがった。だったら時々貸してあげたらと言ったら、母はきっとした顔でこう言った。
「他のことならともかく、冬のソナタだけは絶対に貸さないことにしているの。私のタカラだから。Yさんには、うちに来てもらって一緒に見ようって言っているの」と答えた。あまりに子供っぽいので、私は苦笑するしかなかった。
母が亡くなったとき、私はYさんのお宅を訪ねて、冬ソナのビデオを差し上げた。「母はいつもYさんと冬ソナについて話をするのを、ことのほか楽しみにしていましたから、母の形見としてもらっていただけますか」と。
Yさんは恐縮しながら、「きっと大事にして、お母さんのことを思い出しながら、これからも冬ソナを見ていきますから」と答えてくれた。
つい、この間に、冬ソナ特番の仕事をしたと思ったら、もう5年以上経過しているのだ。
母も死んだ。パク・ヨンハさんも死んだ。ユンさんは結婚した。人の世の移り変わりは激しい。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング