デカダンスに溺れるか それを超えるか
多忙な土曜日を終えて、深夜から未明にかけて自堕落な時間を過ごした。
江国香織原作の映画「落下する夕方」のDVDを見て、そのまま江國の最新作『抱擁、あるいはライスに塩を』の続きを読んで、最後まで読み通して。ふんと少し感心して、「だから、どうなんだ」と憎まれ口を江國にききながら・・・。
清岡卓行のエッセー「郊外の小さな駅」を手にとる。鮎川信夫の死にまつわる挿話と清岡の感懐を眼にしたときから、猛烈に清岡の小説を読みたくなる。「アカシアの大連」でなく『マロニエの花が言った』を。晩年の10年間に書かれたという。83歳で死去しているから70歳を過ぎて、ため息が出るような美しい小説を書いたことになる。
清岡の大連というイメージから、戦前の植民地、白系ロシア、ライスに塩、とぐるぐる酩酊が起こったらしい。
「郊外の小さな駅」のなかに、辻征夫の名前を見つける。この人が唯一出演したテレビ番組を私は作った。ねじめ正一がキャスターをした『未来潮流』。辻は下町のそば屋で朴訥とインタビューに答えていた。そのと引用された、彼の詩がとてつもなく美しいことに驚いた。辻はそれから数年しないうちに死んだ。四十代であったはずだ。
清岡卓行の最晩年に口述筆記された詩、「ある日のボレロ」。
その一節ー―デカダンスに溺れるか それを超えるか
旧制高校生の匂いを残した言葉、デカダンス。
この文言に惑わされて、気がついたら白々と夜は明けていた。
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