ソン・ガンホ
文化村で、韓国映画「大統領の理髪師」を見た。うわさに違わず佳作だった。
パンフレットの解説で、川本三郎さんも書いていたが大衆のエネルギーを描いた
ファルス(笑劇)だった。ファルスはコメディやお笑いとはやや異なる。もっと政治的
というか社会に対して批判や抗議を含んだものだ。
かつて、花田清輝がよく使った言葉だ。
今の日本にはないジャンルだ。逆に、韓国社会は民主化の長い戦いを経て
現在を作り上げただけあって、社会批判も堂に入っている。かつてであれば、学生
運動、労働運動を敵視したり、軍事政権の非道ぶりをあげつらったりと、常套化した
物語だったが、この映画はそんな硬直性を持たない。
だいたい、あのパク大統領をモデルにした大統領の散髪屋さんという設定がたくみだ。
この監督は第1作というが、すごい才能が現れたものだ。
語り口は、「シャル ウイ ダンス」の周防監督や「ウォーターボーイズ」の矢口監督に似ているが
内容や人物の深さは、かなり差があるのではないだろうか。
でも何よりいいのが俳優たちだ。子役もいいが、理髪師夫婦が抜群にいい。
妻のムン・ソリは「オアシス」で感心したが、今回もなかなかのものだ。
そして主人公の理髪師ソン・ガンホ。実にいい役者だ。彼の父性愛の演技に
ジンときた。がさつで武骨で繊細な表情・・1作ごとにソンは違う顔を見せてくれる。
映画を見た帰り、ツタヤの前を通ったら、またソン・ガンホの演技が見たくなり、「殺人の
追憶」のDVDをレンタルした。この作品もハリウッド帰りの若い監督が指揮しているが
実に、コクのある作品だ。
ソンはこの映画「大統領理髪師」のシナリオを読んで、たとえ若い監督であろうと
やりたいと意欲を見せたという。
そして、主役でもないのにムン・ソリを交渉するなどできないと、引いていた監督に代わって
ソン自身がムン・ソリを口説いたという。
にしても、ソン・ガンホのような役者は日本にいないのかしらん。
いた。一人いた。
川谷拓三だ。拓ボンも同じ思いをもっていた。
このことについての詳しいことは別の機会に譲るとして
ソン・ガンホは、私にとってユン・ソクホと同じくらい、韓国の現代を知るための
重要な存在だ。
「殺人の追憶」のソン・ガンホ
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