その気持ちは分かる
ある研究者から聞いた。
Aさんは、長くこつこつと研究してきたテーマをある機会に発表することになった。その主題には他にも賛同するものがいるということを示すために、共同の提案者をたてた。その人Bさんに内容の理解を得ておくために、研究してきた事柄や資料を送った。発表は無事行われた。
しばらく経って、その主題と酷似した研究が国の助成を受けていることを偶然知った。国に申請したのはBさんである。50字ほどの要点を書いた文章には、Aさんがあたためてきたコンセプトが少しだけ形を変えて記されてあった。Aさんの悲しみと怒りは推測してあまりある。
ひどいものだ。学者の良心なんてことはまったくBにはないらしい。
他の研究主題をパクるということは、自分のメリットにするばかりでなく、元の研究者の可能性も奪うことになるのだ。
このブログを見ている人から時々言われる。業界の人も読んでいるから、あまりネタについて書かないほうがいいのではと。ご親切なことに感謝するが、私は気にしていない。正直にいえば、ここで書くということは、ある程度知られていたり、私自身の取材が進んでいるときに書いたりしているから。
テレビの世界では、パクリというのは珍しいことではあるまい。ヒットしたネタであればすぐに「柳の下の2匹目のどじょう」を狙う輩が出てくるのだ。逆にいえば、パクられるほどのネタを作り上げろということもある。
Aさんよ、気を落とすな。むしろ、その研究を早く進めて、早めに発表してみたら。この主題は私が先行してきた研究ですということを、書籍にして満天下に示せばいいのだ。
喧嘩して泣いて帰ってきた子に、もう一回行ってやりかえしてこいと、檄を飛ばしたい気分だ。
そういえば、去年、私もよく似た気分を味わったな。少年サンデー、少年マガジンのドキュメントを作っているときだ。放送の直前に同名の新書が出たのだ。まさか、内側から出るとは思わなかったから、怒り心頭に達した。番組で取材したことを、まるで自分が調べたように記してあったらしい。それを読んだ知人が教えてくれた。
番組には傷がつかなかったから良かったが、この出来事は忘れていない。もうしばらくしたら、この少年週刊誌の誕生の経緯をどんなふうにして調査して、情報を手に入れたかの顛末を書いてみようと思っている。そのための、小学館、講談社のOBのみなさんへの追加取材は終えている。
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