秋は立つか
週はじめの「のぞみ」に乗って京都に向かっている。なんとなく空は曇っているせいか、やや暑さが薄らいでいる。もうそろそろ秋になってほしい。
一昨日、谷啓さんが死んだ。2階の階段を登ろうとして、脚を踏み外しての事故死だという。78歳でやや早かったと言われるが、当人はどうだったのだろう。植木等さんが病死したときの悲しみは尋常でなかった。その後、少し心身ともに弱ったという噂を耳にしていたから、思いがけない死ということではなかったのじゃないだろうか。
植木さんのドキュメントを制作したときに、谷さんに2度ほど会ったことがある。一度は六本木のスタジオでトロンボーンを聞かせてもらい、2度目は成城の東宝スタジオで植木さんを囲んでの座談会だった。スクリーンやブラウン管で見る谷さんと違って、無口でもの静かな人だと感じた。
大山が見える。厚木あたりの田んぼは黄金色の稲穂で満ちている。今年は暑かったせいか、稲の出来は悪くなさそうだ。
植木さんの番組は2004年ごろに手がけたが、思えばいい頃に作ったものだ。クレージーキャッツのメンバーがまだ4人残っていたし、全盛期の多忙さがなくなり、各メンバーも悠々と余生を送っていたから。植木さんがいて、谷さんがいて、犬塚弘さんがいて、桜井センリさんがいた。
進駐軍のキャンプなどで演奏をしていた頃の話を、植木さんは懐かしそうに語ってくれた。
横浜で仕事があったとき、谷さんの中古の外車で二人で向かった。ハンドルもブレーキも老朽化していてかなり不安定だった。植木さんがときどき降りて、ナビゲートしながら横浜から東京まで帰ることになり、さんざんだったと楽しそうに語っていたことを思い出す。
富士山には円盤のような笠雲がかかっている。麓からむらぐもが湧いてきて、その姿を消していく。茶畑にもうすい霧のようなものが落ちている。
私の世代には、日本テレビの「シャボン玉ホリデー」が忘れることができない。スタンダードなジャズメロディの合間にはさまるクレージーの軽妙なコント。植木さんの「お呼びでない」もよかったが、谷さんの「ガチョーン」はとてもシュールだった。今考えると、あのコントなどが映えたのは、ザ・ピーナッツやなべおさみ、小松政夫というワキが良かったことだ。鹿内孝なんて歌のうまい人も引かれたものだ。
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