定年再出発 |
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偶有性の渦
税金の申告漏れで「男」を落とした茂木健一郎。6年ほど前、『脳と仮想』であざやかに論壇にデビューしたときはおおいに期待し関心をもった。その後、人気番組のキャスターとなって売れっ子になると、なんでもかんでも脳の働きに帰する論法にいささか嫌気がさし、彼の続々と出すベストセラーには興味をもたなくなった。金儲けで本を書いているとしか思えなかった。だから所得税スキャンダルが噴出したと聞いて、さもありなんと高みの見物をしていた。 そのタイトルに惹かれて、茂木の最新の著『生命と偶有性』(新潮社8月25日発売)を手にした。この週末には、梶井基次郎評伝を読むつもりでいたのだが、少し読み始めると、茂木本がめっぽう面白く、つい昨夜も遅くまで読む耽ることになった。 偶有性なんて聞きなれない言葉を、最初に目にしたのは社会学者大澤真幸の岩波新書だったと思う。そのときは分かったような分からない言葉でしかなかった。その後、「被爆者」を考えるときにかなり重要になるのではと思いついてからは、この言葉に注意深くなっていた。そこへの茂木本出現である。 そもそも偶有性という言葉はcontingencyの訳語である。心理学では随伴性と訳されることもあるそうだ。乱暴にこの言葉を説明すると、世の中には偶然に満ちていながら、ある必然を感じられることもある、という考え方とでも言えるだろうか。茂木はこう言っている。《半ば規則的であり、そして半ば偶然であるというそのあわいの中にある。偶然と必然が有機的に絡み、その中で私たちの生は進行していく。》 このことを茂木は蝶の道を比喩として説明している。 蝶は陽のあたるところ陰のところ、どのあたりを飛ぶかはおおよそ予想がつくが、その瞬間の羽ばたきは予想もつかない。自由意志と必然のような関わりにも似た蝶の道。そして、偶有性。 人生には偶然のようにして必然であること、その逆に必然のようにして偶然起こること、というものがあるのだと、私は雑駁にまとめて理解した。自分がディレクターになった経緯を考えると納得できる。たまたま歯科医院の待合室のテレビでアナウンサー募集のお知らせを見たことから、放送局に願書を出すことになった。そうやって偶然入社したものの、その業界に40年近く携わってくると、この仕事に就いたことは必然のように思えてくる。 さて、茂木はこの偶有性を考えることにしたのは、彼の長年のテーマであるクオリアにおおいに関わるからだと説いている。クオリアとは意識に伴う実感とでも言えばいいのだろう。感覚の質感と表現される。感動の“たしかなもの”とでも言ったらいいだろうか。このことを茂木が言い出して話題になった。さらに、この言葉を出動させたことで、学会から総すかんを食ったとも言われるが。その意識するときに立ち現れる“たしかなもの”クオリアもまた、偶有性に大きく縛られていると茂木は考えているようだ。 話を広げてしまうが、木村敏の著に『偶然性の病理』というのがある。そこで、精神の病理として偶有性が顔を出している。分裂病の患者で、鏡を見ていると鏡像か実像かの区別がつかなくなるという。ここにある私はたまたま偶然にすぎないのであって、他人であることとは統計的な差でしかないという。その不安が病を引き起こすという症例を木村は紹介しているが、これはまさに偶有性問題だ。 広島と長崎で長く被爆者の取材を続けていると、いつも耳にしたのが、「なんで、私が生き残って、あの人が死んだのでしょうか」という呻きにも似たつぶやきだった。井上ひさしの「父と暮らせば」のなかでも重要な言葉として提出される。 偶有性という概念を持ち出して、被爆者に説明するとすればこうなるのだろう。―― 「あのとき、あなたが死んで、その人が残ったということもあったかもしれない。でも、実際にはあなたが生き延びて、その人が死んだ」 妻や親族を原爆に奪われた永井隆は、「原爆は摂理だ、神のおぼしめしだ、犠牲者はいけにえの子羊」と発言して、強い批判にさらされる。が、神というおおいなる必然を信じる永井には、妻の死という偶然をいかに位置づけたらいいのか迷った挙句の言葉だったのかもしれない。このあたりは、うろ覚えで記しているから、他日、山田かんの永井批判をきちんと読んで考えないといけないだろう。だが、前から永井発言への政治的批判に対してなにか居心地の悪さを感じていたが、この偶有性を軸に考えてみると、新しい論点が現れてきそうな気がするのだが。 来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
by yamato-y
| 2010-08-29 15:15
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