定年再出発 |
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驟雨(はしりあめ)
明け方に一雨来た。台所の窓を雨がどんどん叩くので目が覚めた。 ここはどこだと一瞬見失った。暗がりに目を凝らすと仏壇が黒々と光っていたので、実家に帰ってきていることを思い出す。 直前まで見ていた夢は、幼かった頃のものだ。弟たちはまだ学校にも上がっていない時代だから、きっと私は小学生で、夏休みの話だろう。朝のラジオ体操に出かけるときのことであったような気がする。出席カード(判を押してもらう例のやつだ)がないと言って大騒ぎしたあと見つかり、朝風のなかを走って行った日を夢見ていた。 「ヨシアキ、ヨシアキ」と母の呼ぶ声がする。顔に蚊帳が張り付いていて剥がそうとしている。眠くてたまらない。のろのろと起き上がって流し場に行き、冷たい水で顔を洗う。窓の外には青い稲穂の波。庭のニセアカシアは白い花をちらほらつけている。遠くの空には朝から大きな入道雲がわいている。 昨日の同窓会で聞いた中学生の私の印象は、漫画を描いてばかりいたということだった。ノートの裏にちょこちょこと描いて、友達に配っていたという。たしかに漫画が好きだった。というより当時流行っていた劇画が大好きだった。辰巳ヨシヒロや山森ススム、さいとうたかをがお気に入りだった。そのうちにさいとう派の有川栄一が好きになり、彼の流れるような動きのペンタッチを真似するようになる。Gペンと墨汁が欲しいといつも考えていた。 もうひとりの友は、私が先生に反発ばかりしていたと語った。あんなに先生に反抗するなんて凄いなと羨ましく思っていたらしい。私は普通のオトナシイ少年だとてっきり思っていたからずいぶん外部の目と開きがある。 明け方の驟雨は10分ほどでやんだ。一雨来たあとは急に涼しくなった。タオルケットだけでは肌寒く、もう一枚夏掛けを押入れから引っ張り出した。目が冴えて眠れなくなり、青い闇のなかで、少年時代を回顧する。 夏休みは、朝の10時まで友達を誘いに行ってはいけないというルールがあった。朝の涼しいうちに宿題や自由研究をやりとげるように指示されていた。扇風機にあたるのも、子供にはぜいたくと、机の前に座って汗をぽたりぽたりとノートにこぼした。その水溜りをみずうみだと見立てて、漫画を描いた。描いているうちに夢中になった。 あまり静かに勉強しているので、気になった母が、上からノートをのぞきこんだ。「あんた・・・」とあきれる声がして、ノートを慌てて隠したが間に合わない。 昼からの海水浴は取り止めとなり、私は終日家に謹慎蟄居の身となる。 夕方になれば、東洋紡績のグラウンドで野外上映会が開かれた。夏休みだから、子供向けの東映時代劇だった。夕方6時過ぎからそわそわした。映画を見に行ってもいいと、厳格な父が許可してくれるだろうか。近所のこどもたちが出かけて行くのが分かる。父は素知らぬ顔で黙々と飯を食っている。早くいかないと、ニュースも見られないから私は気が気でない。 下から父の顔をうかがうと、「明日はちゃんと勉強をするか」と厳かにのたまう。 映画が見られるなら、この際なんでも約束する気になっている私はうなづく。「行ってよし」 慌てて家を飛び出し、国道を越えて東洋紡績のグラウンドに向かう。 会場では大きなスクリーンがテニスコートのフェンスに掛けられ、風にぱたぱた揺れていた。映画はまだ始まっておらず、顔見知りの友達を探して、茣蓙の上に腰を下ろす。 やがて映写機に灯がつき、会場がどよめく。レンズに虫が入ったといって大騒ぎをし、リードの秒数カットに大声を上げる。「5、4,3,2・・」 それから2時間。私の夏休みの至福の時間となる。 夜が明けた。裏の戸を開けた。いちじくの木が夏の日を浴びて立っている。時折、朝の風が吹き抜けていく。 昼からの列車で東京に戻る。その前に家の掃除と片付けをやって、一風呂浴びよう。蝉が飛んできて鳴き始めた。8月9日、長崎原爆の日。今日も一日暑くなりそうだ。 来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
by yamato-y
| 2010-08-09 09:06
| ふるさとへ
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