猫翁さん
敬愛する先輩の俳号は猫翁さん。俳句と映画が好きということで気があう。二人で酒を飲みながら、気にいった句を披瀝しあうのが楽しい。これまで芭蕉と蕪村のマイベスト30をやった。蕪村の続きと西東三鬼をやろうと話をしている。翁も3年ほどまえに癌になって、現役から降りた。悠々自適である。経済的なことは知らないが、少なくとも精神は悠々自適だ。
その猫翁さん、猫好きが高じて都心の住まいを出て小田急の秦野まで行ってしまった。家で捨て猫を飼いはじめたところ30匹近くなり、都内のアパートでは家主から疎んじられて、ならばということで、郊外の一戸建てに住むようになった。
猫好きでない私から見ればバカみたいと思うが、当人はいたって気にしない。
リタイア以後、俳句に凝って、私もその仲間に入れていただいた目白遊俳クラブの有力メンバーとなるほどの腕前。映画といい俳句といい趣味は合う。猫だけが合わない。
その翁から手紙が届いた。飼っている猫が一年前から癌になった。いろいろ手をつくしたがいっこうによくならない。それどころかだんだん悪くなっている。先日、サイエンス番組を見ていたら、ウィルスで癌を撲滅するという研究が紹介されていた。まだ実用化していない、治験段階だと報じていたが、その連絡先を調べてほしいという手紙だ。
どうやら、一か八かで最新方法に賭けてみようということらしい。「猫の件、何としてでも、あらゆる手だてを尽くしたいと念じています」と書かれてあった。そこまで猫が大事か。呆れた。が、呆れるより感動した。
その手紙の末尾に、一句あった。
端居して人待ち顔やロスタイム
できるだけ早く返事が欲しいという意味だろう。モダンな匂いのする佳句だ。そういう技術を使って催促をする。ほんとに、どこまでも嫌みなオッサンだ。
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