66年前の戦争
名作「駅馬車」の巨匠ジョン・フォードが撮影総指揮しているドキュメンタリー「海ゆかば」を見た。
フォードはよく知られた愛国者である。真珠湾事件以来、日本に対して敵意を抱き、日本をターゲットにしたプロパガンダ映画を数本作っている。劇映画は「コレヒドール戦記」を撮っている。一方、映像の専門家として国防省から戦場のドキュメント映像の指導を依頼されたようだ。此の映画においても、その位置にある。監督をやっているわけでない。あくまで撮影の指揮をとっているのであって、構成は別の人物がやっているらしい。日本語のスクリプトは須藤出穂という知られた放送作家が書いているから、必ずしもフォードの意図とか視点が明らかになっているとはいいがたい。
それでも、アメリカ政府の戦場カメラマンが捉えた映像は、明らかに敵日本の狡猾さと無分別ぶりと蛮勇が浮き彫りになるようなアングルに立っている。これはジョン・フォードの視座ではないだろうか。物語は、・真珠湾奇襲・ミッドウェー海戦・死闘の中の米海兵隊員・レイテ沖海のカミカゼ、の4つの章から成る。
真珠湾攻撃からレイテ沖海戦までの壮絶な日米の死闘。
見ているうちにだんだん辛くなってくる。特にカミカゼがあえなく墜落したり炎上したりする姿を正視することは難しい。砲弾の雨をかい潜って、必死で体当たりを試みる孤独な戦闘機に、乗り組んでいる若者を思って胸が痛くなってくる。レイテ沖海戦・・・
昨夜、吉村昭『海軍乙事件』を一晩で読了。
昭和19年10月、フィリピン,レイテ沖で空前の日米海戦が行われ、日本の艦船が多数撃沈されたり沈没したりした。
その半年前の19年3月に海軍乙事件が起きている。連合艦隊の最高首脳が2機の飛行艇で脱出をはかったおり、米軍の襲撃を受けた。古賀長官の乗った一番機は墜落、福留参謀長が乗った二番機は海に不時着した。福留以下10余名は海をさまよっているところを、フィリピン現地のゲリラに掴まるという信じ難い事件が発生する。これが海軍乙事件である。
このとき、福留らは最高機密である「Z作戦要領」を保持していて、それもゲリラによって没収される。その後の日本海軍の作戦計画を記した機密情報であったから、連合国側にとって最高の獲物を手に入れたことになる。ただ、福留はこの機密が敵に渡ったとは認識していないと後年言い張っている。実際、福留は虜囚から解放されたあとも咎められることなく、2階級特進している。だが、実際に要領を奪われたことは、後にアメリカ側の証言によって明らかとなる。
一説によれば、このとき奪われた資料によって、日本海軍の動きが相手に読まれ、レイテ沖の海戦においても一敗地にまみれたといわれる。真相は分からないが、若い命がカミカゼとして命を散らしたことと、この福留が戦後も生きて海軍OBの組織のトップにまでなったこととはあまりに不均衡な気がしてならない。
しかも彼は80歳まで生きて、畳の上で死んだ。
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