祇園囃子が流れる
東京を離れて西下すると雨雲はたしかに大きくなった。この2,3日、京都には大雨が降ったそうだ。出町柳の鴨川では堤のすれすれまで水位が上がったと、聞いた。
祇園祭の宵山が始っていた。雨の都大路に祇園囃子が流れる。
四条通りは車規制で歩行者天国となっていた。土砂降りにもかかわらず、いつも車で渋滞している大通りにはおおぜいが闊歩している。色とりどりの浴衣姿の若い女たち。外国人観光客。そして家族連れ。8万の人だというが、雨のせいで去年より6万少ないとか。
100年続く新京極の老舗でうなぎを食べた。東京のうなぎより少し甘みをおさえたさっぱりした蒲焼は悪くない。先付けに出た稚鮎の塩焼きが絶品だった。頭からがぶりといくと、鮎独特の苦味が口に広がる。なにより、京都の温野菜は味が繊細で美味しい。おまかせのコースを2時間かけてゆったり食べた。日本酒は一合だけにした。
夜9時、店を出ると雨が上がっていた。濡れた路面に道行く人の影が映って幻想的だ。四条大橋のたもとまで行くと、おおぜいの観光客が暗い川面を眺めていた。瀬音が大きい。東山は雨雲で霞んでいる。
第一次定年をむかえた58歳の頃からこの5年ほど京都に通うことになり、帰りにはかならず敦賀に寄って、おふくろと一晩過ごすことを続けた。行くと、母は喜んでくれた。祇園祭の時期になると大津生まれの母はいつも恋しがったものだ。京都の町の様子を話すと喜んで聞いてくれた。
今から考えると、私が定年になって故郷に戻ることを、母は期待していたのかもしれない。だが、そんなつもりはないと何かの折に言ったことがあったが、母は内心落胆していたのかもしれない。そんなことも気遣わず、祇園祭の惣菜を買ってきたぞと、折り詰めをダイニングのテーブルに放り出していたことを、今になって悔やむ。
コンコンチキチンの囃子が物悲しい。母はクリスチャンだったから考えたことがなかったが、今年は母の初盆になるのだということに今気づいた。
明後日の土曜日にはいよいよ山鉾巡行となり、梅雨があけて夏が来る。
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