笑いの道
ワールドサッカーの南アフリカ大会で、日本がカメルーンに勝った。まさか1勝出来るとは思わなかったので、まずはお目出度い。といってもかなり幸運に恵まれた勝利だった。これで少しサッカーが話題になるだろうが、あまり期待しないほうがいい。むしろ小惑星探査機はやぶさの快挙のほうが大きい。この満身創痍の小型ロケットが7年間も飛び続けて地球に回収されたという技術には感心した。
冷たい雨が降る昨夜、中野まで笑いの道を志す卵たちの公演「あっぱれライブ」を見に行った。中野といっても西武新宿線沼袋に近い住宅街にある客席40ほどのちいさな劇場だ。
7時半開演で9時過ぎ終了するまでに、15組の笑いが次々に登場した。入場料300円、安い。にもかかわらず客席は10人ほど。出演者全員男に対して客席はほとんど女性。どうやら芸人の知り合いや恋人らしい。そういう関係者をのぞくと純粋な客は2人しかいない。私とて学生がこのライブを撮影するというので付き添うような形で見学していたのだ。
汗や唾がかかりそうな間近で見ていると、彼らの熱演に圧倒される。が、芸そのものは辛い。寄席の芸と違うのは彼らの師匠というのがいるわけでなく、テレビ芸を見よう見まねでやっていること、プロデューサーがいないこと。この二つがないというのは彼らの芸を進展させるうえでかなり厳しいのではないだろうか。
自分たちの持ちネタを演じるときはまだいいのだが、幕間で行われるテレビの真似のようなやりとりはいただけない。
レッドカーペット、アメトーク、ガキの使いなどテレビでおなじみのトークを真似した幕間トーク。あたかも彼らが世間で知られた芸人かのように振る舞う。自分たちを芸人と呼んでいるから一端の芸人と自認しているのだろうが、見ているこちら側が恥ずかしくなってくる。
客席が白けるというようなことを最初から気にしていないから、トークはだらだらと続く。他者性のない笑いというのはきつい。
月に1度か2度開かれるここでの公演は彼らの数少ない発表の場だ。ここで修業を積んで、ナベプロやホリプロが主催するお笑いライブに出場して、そこの所属芸人になることが目標らしい。その日を夢見て、小劇場で奮闘する彼らたち。開演前にひとりの芸人にインタビューすると、普段はうどん屋でアルバイトして頑張っているという答えが返って来た。将来の見通しはと意地悪く聞くと、「どうなるんでしょうかねえ」と他人事のような答え。おそらく照れての発言だろう。そのあと懸命にセリフを練習する姿が心に残った。
年の頃は20代前半の若者たち。飛んだり跳ねたり大声を出したり、若さがなければできない「芸」だ。必死の形相で客席奥の一点をみつめて奮闘する彼らを見ていて、私はつい親の心情に思いを馳せ胸がイタくなった。
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