京の青空
5月末とは思えないほど寒さが続いている。夕べも木屋町の高瀬川沿いの赤提灯で一杯飲んだが、外に出ると川風が冷たく、思わずカーディガンの襟を立てたほどだ。
10時過ぎに、教え子のMくんがやって来て晩飯を兼ねてミンミンで呑んだ。海老のチリソースと鶏のから揚げをあてに、私は老酒、彼はハイサワー。Mくんは先斗町でバイトをしていて、仕事があがるのが10時。それから、木屋町の私の宿泊するところまでやって来て飲みながら、あれこれ話をした。
漫画家志望のMくんは現在休学中。この1年の間にいろいろなことを体験しようと、花街でバイトをしたり演劇をやったり、自主映画を製作したりしている。昨年、私の授業を受けて映像を作る楽しさを覚えたこともあって、今年の授業にも単位取得は関係なく出席している。彼が今年企画したネタは就職活動、シュウカツだった。
彼自身は漫画家になろうという決心は変わらないのだが、周りの友達を見ていると、かなりシュウカツにエネルギーを奪われていて、いったい仕事をするとは何だろうという根源的な問いが彼のなかに出てきたそうだ。そこで、大学のOB・OGたちをカメラを持って訪ね歩いて、それぞれの仕事観、職業観を聞きまわりたいという企画を提出してきたのだ。
私はこのネタはとても面白いと考えている。だが、訪ね歩く対象はたいていが京都ではなく東京で活躍する人ばかり。となると、東京まで出かけて宿泊しながらの撮影となる。当然、経費がいる。大学の授業にそういう予算はついていない。では、どうしようかという相談が、昨夜の飲み会の趣旨であった。
相談についての結論は先送りになったが、彼が今関わっているバイトや映画作りの話はとても面白く、かつ現在描いている漫画のことも、熱く語ってくれた。32ページの漫画は夏休み前に完成させる予定だとか。出来上がったら、見せてくれることになり、私は講談社の知人にも見てもらえるように頼んでみることを、彼に約束した。
不況で、仕事が見つからないと焦る学生たちのなかにあって、Mくんの生き方は爽やかでもある。だが、暢気そうにみえるMくんも将来を考えると不安で立ち止まりそうになることもありますよと、呟いたのが少し気になった。
本日は、授業で出てきたもう一つの企画、京大熊野寮のくらしという主題にとりかかる。いまや、全国でも珍しい存在となった、学生自治による寮のくらしぶりをルポしようというネタ。企画は3年のKさん。彼女のリサーチ結果を昨日聞き取ったが、今ひとつ実態がはっきりしないから、とりあえずみんなで現場に行ってみようということになった。
気温は10度しかない。外は寒そうだからセーターを持っていこう。あつい雲が切れて青空が見えている。
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