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木漏れ日のなかで

詩人、天野忠

書棚の奥から、山田稔のエッセー集『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』が出てきた。手にとってぱらぱら眺めているうちに懐かしくなり、休日の朝寝坊を決め込む寝床のなかに持ち込み、腕枕を右に左に替えながら読みふけった。山田の文章も好きだし、天野の生き方も好きだから、この本は私の二重好みで、読み始めると止まらない。

天野は京都の市井に隠れ住んだ詩人。短いいい詩をいくつも書いて、80歳を越える長寿で1993年に亡くなった。長寿と書いたのは明治生まれで立派な体格の持ち主だった天野はすこぶる健康で、その世代の老人より長生きだったと思うからだ。盟友の富士正晴が74歳で死んだことを思い浮かべればこの言い分は分かってもらえるだろう。その富士が死んだときに書かれた詩。「会話」

おまえが/ころっと/逝って/しもうてから/秋風が吹いてきたというのに/
うちの/貧相な薮蚊が/まだ/儂のよぼよぼ足を刺しよる
どこからも/電話はかかってこんし/かける相手は/あらかた/死んでもた。
じゅつないこっちゃ。/な、/富士よ。
そっちは/ラクか。
ラクか・・・。

天野忠の詩集は、大阪の編集工房ノアからいくつも出版されているから、そこを調べれば手に入れることができるはず。山田の『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』もノアの本だ。
 筆者の山田稔は京都大学のフランス語の先生。関西の有名な文芸同人誌「VIKING」の主幹格の人で、軽妙な文体にファンは多い。この「VIKING」の主宰だったのが、作家の富士正晴である。豪放磊落にして小心繊細な伝説の「竹林の隠者」。20年前、富士が亡くなった年に、私は「竹林童子」というタイトルで富士正晴のヒューマンドキュメントを制作したことがある。その縁で、文学の同志であった山田稔の存在を知り、富士と若い頃に交友のあった天野忠を知った。

 その前から、尊敬する先輩のK氏から、天野という優れた詩人が京都に隠棲しているということを教えられていた。その時はそれほど関心をもたないままでいたところへ、富士の取材を通して天野の経歴を知り、あわてて作品を読んだ。ライトバースと呼ばれる短めの詩は堅固な小世界を形成していて、私はノックアウトされてしまった。

 天野さんは京都の町家の路地の奥に夫人と二人きりでひっそりと暮らしていた。私はカメラマンと音声マンといっしょにうかがい、富士正晴についてインタビューした。体の大きな詩人は終始笑みを絶やさず、不しつけな私の問いにも誠実に答えてくれた。京都の繁華な町中とは思えない静けさで、詩人ははんなりした言葉を巧みにあやつって富士正晴のひととなりを描いてくれた。京菓子がお茶うけとして出されたことが妙に心に残っている。山田の本によると、詩人と奥さんの年の差は10とあるから、細身の麗しい夫人は70歳だったのだと知る。

 天野は表面、もの静かな大人だが、京都人特有のちくりと刺すようなイロニーを秘めた人だったようだ。勤勉な詩人として、こつこつと作品を作り続けた。
山田が大学を退職したときに交わした二人の対話―。再就職するつもりはなく、運動不足解消で週に一回ぐらい非常勤で教えに行こうかと山田が語ると、「もう、どこにも行かんほうがよろし。すぱっと全部辞めはったほうがよろし。どんなにせいせいするか、自由に感じるか」と気迫のこもった声で天野が語ったというのだ。そのあとで、つぶやいた言葉に私は思わず胸を熱くした。
「大体、真面目に、熱中して働いた人ほど辞めた後にガックリくる。適当にサボっていた人はそうでもない。」

終生変わらず、知性と理性を保ちつづけた天野だが、亡くなる半年前あたりから崩れたと、山田は報告する。
《それがその日も変わらないのに、どこか違う。話し振りにも声にもどこか物憂げなところが感じられる。天野忠の心と体が崩れかかっている、そんな印象に私は胸をつかれたのだった。》

このエッセー集『北園町九十三番地 天野忠さんのこと』は、山田稔が天野を訪ねた10年のことが回想のかたちで表されている。この訪問記というスタイルを私は好む。あの露伴を訪ねた小林勇の『蝸牛庵訪問記』と並んで、この書を私は愛でる。

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by yamato-y | 2010-05-16 12:05 | Comments(0)
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