定年再出発 |
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乾いた笑い
この連休中、ずっと読書にふけっていたわけでもない。合間合間にフランス映画を大画面で鑑賞した。エリック・ロメールの長編が一本、短篇オムニバスが二本。レンタルビデオ屋にはない珍しい作品まで見ることができた。それらの作品には、人生の皮肉とシニカルにしてヒューマンな笑いが入り混じり、面白かった。少なくとも、日本映画の伝統にはない種類の映画だ。強いていえば、伊丹十三の映画にそのにおいを感じるが、それとて似て非なるものという類似性かもしれない。 ロメールの作品は基本的に短篇小説の作りだ。ライトバースの香りがする。 オムニバス映画「レネットとミラベル 四つの冒険」。この映画の4つめの挿話「絵の販売」。パリでルームシェアするふたりの若い女。一人は画家志望でおしゃべりな田舎娘レネット、もう一人は大学生で理知的なパリっ子ミラベル。画家志望は自分の描いた絵の主題や内容について饒舌に語りながら、最後に絵とは言葉で表現できないものねと独りごちる。それを聞いて、ミラベルはあなたはしゃべりすぎよとたしなめると、レネットはムキになって、明日はいっさい口を開かないと宣言する。 そこへ画廊から明日会いたいという電話が入る。絵を売り込むチャンスだがしゃべらないと決めたことと反することになりレネットは悩む。それでも、口をきかずに画廊と交渉すると決意。ミラベルもその場に知らないふりして立ち会うことを約束する。 翌日、画廊に出向くと、店主は口がきけない彼女をフシギとも思わず、勝手に彼女の作品を解釈して、挙句には解説まではじめ、評価までする。そして1700フランと値踏み。それまで芸術の価値を声高に話し、この絵についてもなかなかいいと言っておきながら、最後に提示した金額は予想外に低い。2000フラン欲しかったレネットはその額にためらう。そこで、それまで傍観していた大学生ミラベルが乗り出してくる。画廊の店主に芸術の価値を理解しているなら、彼女の絵に正当な評価をくだして2000フラン払ってあげるべきと主張。しぶしぶ店主はその要求に応じる。画家と大学生は希望の報酬を得て、喜んで出て行く。 入れ替わり入ってきた女性客。店内の絵やオブジェをあれこれ見て、さきほどのレネットが置いていった絵に目をとめる。客はその絵が気に入り、いくらかと店主に価格を聞く。すかさず店主はしらっと「4000フラン」と答える。 鮮やかな幕切れ。うまいもんだ。ビターフールという言葉がこの作品に相応しいかどうかはおぼつかないが、苦くてからっとした笑いがある。この物語の長さ(尺)が30分足らずというのがまたいい。ビル・エバンスの小気味のいい演奏を聴くような後味が残る。 映画技術の点からみればこの作品はひどい。16ミリで撮っているらしく(普通、映画は35ミリを使用する)フィルムの解像度は悪く、色温度調節もずさんでカットによって画面の明るさがバラバラであるし、手持ちカメラのぶれがたえず起きている。音声も野外では平気で街の騒音によってセリフがかぶる。おそらく、日本映画であればすべて撮り直しを命じられるような撮影、とその仕上げだ。悪い冗談としか思えない。だが…。 このスタイルは、きっと確信犯だろう。 1994年に制作されたというこの作品。今挙げた野卑な映像作りは作為というか、監督の悪戯心じゃないか。 ロメールといえば、ゴダールやトリフォーと並んでヌーベルヴァーグを形成した人物の一人だ。シネマヴェリテ(映像の真実)を模索して、ハリウッド的リアリズムを蹴っ飛ばしてきた経歴の持ち主だ。絵葉書やカレンダーのような絵が連続するような、“死んだ”映像にはしたくないと、ざらざらした撮影とごつごつした編集を仕掛けたにちがいない。DVDのライナーノーツには、この映画は長編の「緑の光線」を撮り終えて、思いついたようにしてばたばたと製作したとある。 納得した。この映画がライトバース感覚であること。びしっと型どおりに撮影しないこと。その直前の「緑の光線」の息をつめるような物語つくりをやってきたロメールは、ふっと肩の力を抜いて方向転換を図りたくなったのだ。 といって、これが「箸休め」の作品かというと、さにあらず。とんでもない傑作である。 エリック・ロメール監督は今年の1月に亡くなっている。 来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
by yamato-y
| 2010-05-04 14:46
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