四分の熱
目白の俳句倶楽部から同人誌が届いた。去年の後半から母の病気もあって句会参加が叶わなくなり、さらに私自身の入院と重なって長く句作からは遠ざかっていた。先月、やっと気を取り戻したこともあって、雑詠に三句、兼題に一句を投じた。その結果が、今回の誌面に出ている。なんと、私の句が初めての天位をいただいた。思いがけない朗報に嬉しい。
おそらく、なんの野心もなく、今の憂さを少しでも解消しようかなというぐらいで、ひねったのがよかったのかも。欠席が続いている私を、同人の皆さんが励まそうと推薦してくれたのかと考えてもみたが、すべて匿名になった句から選ばれるのであってそれはない。6人のメンバーが取り上げてくれたのだ。僥倖に素直に喜ぶ。
春裂けて卵のごとき月出づる
この句を着想した夕刻はよく覚えている。4月はじめの寒い土曜日の夕暮れだった。桜の花びらは開いたものの寒さでかじかんでいた。低い雲の垂れる空にどろんと月が浮かんでいた。寒いとはいっても、月を見る私のなかにやっと冬は過ぎたのだという安堵があった・・・。
句会の主宰の二六斎師が冊子に手紙を付けてくれて、今回の句が選ばれた経緯を親切に報告してくれてあった。私と同年の師は、私にとって「老年」の友情を結ぶかけがえのない人物。50を過ぎて友ダチになるということはめったにない。心のこもった文章に四分の熱を感じた。与謝野鉄幹、の「六分の侠気、四分の熱」のあれだ。
ところで、二六斎師の境遇にも大きな変化があったことを、冊子の記事から拝察した。3ヶ月前に兄上を亡くされ、半年も経たない四月初旬に一つ年上の姉上を奪われたと、師のコラム「深悼」に記されてある。なんとすさまじい兄姉の死の連続か。六十半ばの死だ。師の無念を思ってあまりある。
その姉上の柩に、一枚だけ短冊をしのばせたと二六斎師は書いている。
ふるさとは夢のをわりの花りんご
師は津軽の出身である。黄金連休の今頃に桜満開をむかえる弘前がふるさと。
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