濃い映画が見たくなって
一日、家にいて風邪対策にあたった。懐かしい友からコメントがあって、若松監督の最新作「キャタピラー」の意味は芋虫ではないかと教えてもらった。
なるほど、江戸川乱歩の同名の小説からヒントを得たのだろう。海外の人にも分かるように英語を使ったのだ。でも、英語が不得意な小生などはキャタピラというとブルドーザーか戦車の重装備を髣髴として、四肢切断の惨苦な情況ということが思い至らず、やや日本人には不親切かも。
ETV特集の旧作を見た。マーチン・スコセッシが語る今村昌平である。これがめっぽう面白い。今村は映画界全盛の松竹に入り、小津の助監督として「東京物語」にも関わったという華麗な経歴をもつのだが、この小津の役者の持ち味を殺すようなスタティックな様式美の映像に反逆して、松竹を飛び出して日活へ行く。そこには鬼才川島雄三がいた。互いに切磋琢磨して「重喜劇」というものに取り組む。かくして、「日本昆虫記」や「豚と軍艦」という庶民の底知れないエネルギーを引き出す名作を作り上げていく。この間のことを、スコセッシはよく見ているし、知っている。私はてっきり、黒澤映画の信奉者と思っていたが、どうも違ったみたいだ。
だんだん、映画が見たくなった。家人も留守だからちょっと渋谷のツタヤでも行ってDVDを数本借りることにしよう。黒いトレンチの下は普段着のセーターとチノパンで右手に傘、左手にとーとバッグを持って出た。
渋谷の駅を降りると、週末ということもあって、関東近在の高校生ぐらいの若者であふれかえっていた。そこを中年のオッサンがコートの襟を立てて、ツタヤに向かう姿は、言い過ぎかもしれないが、老年版「ライ麦畑でつかまえて」の図かなとほくそ笑む。
今日はレンタル4本で1000円サービスを利用するつもりだったから、選択は早かった。
マーチン・スコセッシの「アビエーター」、今村昌平の「女衒」、スティーブン・キング原作のホラー「キャリー」、その流れでトム・ハンクスの「グリーンマイル」。
帰宅後すぐ、「アビエーター」を見た。伝説の億万長者ハワード・ヒューズの伝記映画で、先年いくつも受賞して話題になった作品。ヒューズは金にあかして飛行機と映画に乗り出すという前半を見た時、「ハリウッドの巨費を投じた成金映画か」と軽く失望。ところが、中盤を過ぎたあたりから、ヒュ−ズの異様な言動と、自らが呪縛されていく姿がデカプリオという人気役者を通してうまく描いていた。後半、公聴会でパンナムの陰謀に対して、切り返す小気味よさは、スコセッシのサービス精神が見れて、今村と共通のものを感じる。
ところで、今回の全米公聴会でのトヨタバッシングは、アメリカなら当然企んでやっただろうと思ってしまう。
あと3本残っている。今夜が楽しみだ。
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