古里
第2のふるさとから便りがきた。第1は生まれ育った敦賀。その後こころに刻まれた深さによって第2、3、4と続いて並ぶ。
第2のふるさとは、大学時代を過ごした金沢だ。数年前、「利家とまつ」というドラマの実現に少し手伝ったとき知り合った県庁の人から、新しい金沢の町の案内の便りを頂いたのだ。
懐かしさが広がる。
私が過ごした昭和45年頃、町にはまだ路面電車が走っていた。そのガタゴト揺れる車内から見た風景は、やさしい城下町だった。
「青春の城下町」という歌謡曲がある。「流れる雲よ、城山に上れば見える 君の家」
もう30年以上前に流行った歌だ。新宿の酒場で歌謡曲談義にいつも、この歌でもめる。
この歌の舞台は金沢だ、と私が主張すると、絶対違うと反論するのがいる。
彼は、奥さんの里会津若松だというのだ。この論争はいまだ決着していない。
そこへ、最近参戦してきた者がいる。彼は弘前だというのだ。
いろいろあるが、これらの町に共通することは北国の城下町だということ。
これには誰も異存ない。
ふるさとは遠きにありて思うもの、と詠んだのは金沢出身の室生犀星。
金沢の郊外に内灘という海岸がある。今は開発されて団地になっているが、
当時は日本で2番目に広い砂丘だった。そこにはニセアカシアの林があって、4月から
初夏にかけて匂い、花を咲かせた。
額に汗しながら、砂浜を歩いた記憶がよみがえる。北国の海は冷え冷えと青かった。
あれから34年。その後歩んだ人生は、当時予想もしなかったものとなる。
季語は新年だが、私の好きな句を思い出す。
初暦(はつごよみ)知らぬ月日は美しく
吉屋信子の句だ。
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