ワルツは円舞曲?(承前)
昨夏、ユンさんと我々の間で日韓共同のドラマを制作しようではないかと、
言う話が生まれた。
ユン監督を中心にして、日本側からも数人加わって物語を考えた。
《 主人公は韓国人男性Aと日本人女性B。舞台はイタリアと札幌。
男性Aはイタリアでヴァイオリン製作の修行に励んでいる。
日本女性Bは婚約を終えたばかりで、まもなく京都の老舗のCの元へ嫁ぐ
ことになっている。婚約旅行としてヨーロッパへ旅に出ることになっていたが、
婚約者のCは仕事が忙しくなって参加できなくなり、Bは一人で旅をすること
になった。そのため、Cはイタリアの親友Aに女性の面倒を頼む。
Bは男性が暮らしているクレモナを訪れる。
親友の婚約者とあって、男性Aはミラノやベネツイァなどあちこち女性を案内する。
最後に自分が働くクレモナのヴァイオリンの工房へ案内すると、そこにはかつて
彼女が使っていたヴァイオリンがあるではないか。
何の偶然か、AはBのヴァイオリンの修理を手がけていたのだ。それを契機に
二人は急速に近づく。
といっても、親友の婚約者ということでAは悩む。Bも揺れる…
互いに、想いを告げることもないままやがて別れの日がきて
Bは日本へ帰っていく。--- 》
というようなストーリーを数人で議論しながら、作り上げていった。結局、
これは未完になるのだが、この過程で私はユン・ソクホという稀有な才能を
改めて知る。
今記した話の筋はほんの序盤に過ぎない。ここからいろいろな曲折が起こるのだが
その展開の仕方が、常人では思いつかないことをユン監督は次々に発想するのだ。
聞いている我々も、つい身を乗り出すことが何度もあった。
このAとBの恋にCがからんでもつれる事情を、私は題に表したいと思い、
監督に「円舞曲(わるつ)」としたらどうかともちかけた。
3人の模様と3拍子のワルツを重ねたのだ。
監督はニヤニヤ笑いながら「それもいいかもしれない」と言った。
諸般の事情があってこの企画は延期になったが、この物語の設定などはしばらく
ユンさんや我々の胸に残った。
そんなことの後で、春の物語をつむいだとき、タイトルがなかなか決まらないので
暫定的に「春のワルツ」としたようだ。
と、私は推測するのだが、これは手前味噌かなあ。
でも、まあ実際に制作が始まれば、先の「円舞曲」とは全く違う物語になるとは
思っているが。ただ、男性主人公が音楽に関係するところはあるかも。

ブックファ―スト、渋谷店にて
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