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砂時計

砂時計

 小春日和は束の間であった。きつい北風が吹き付ける。
刻一刻と時が経つ。確実に過ぎていく。砂時計の砂の落下する速度は終わりに近づけば早まる。息を飲むような早さとなってやってくる。

 瞑目すれば、幼かりし頃の思い出がぼんやりと物憂げに立ち上がってくる。

 庭にニセアカシアの木が数本並んでいた。芭蕉の木も大きく育っていた。小さな庭にもかかわらず、草や木はよく生い茂った。小さな農道を挟んで向こうに田んぼが広がっていた。田んぼの先には国道が走り、木の芽川の大橋に向かって坂になっていく。国道の向こうには東洋紡績の社宅が並んでいた。
一面、田んぼだった。5月は早苗がそよぎ、7月には蛍が飛んだ。夏の盛りにはイナゴが爆ぜ9月には稲穂が揺れていた。師走になれば田んぼの水は抜かれ、間抜けた泥田が広がった。シベリアからの寒気が雪を運んで来た。

長屋の小さな家で母は男の子3人を懸命に育てた。食べ盛りが3人、いつもおなかを空かしていた。「腹減った。なんかないか」が口癖だった。水屋を開けてもせいぜいサツマイモの吹かしたものか干し柿か。ちぇっと舌打ちして、それでもイモを喰わえて濡れ縁に寝転んだ。秋の空は高かった。

冬の夜。勉強を終えて庭に出ると、ニセアカシアが黒々と立っていた。枝の向こうに冬の星座がくっきり見えた。北斗七星が柄杓を下にし夜空にぶら下がっていた。田んぼの向こうを走る国道8号線のトラックの音が響いて、遠くから紡績工場の鈍いモーター音がした。夜勤で父は家に居らず、母と子供3人が並んで寝ていた。
何もない貧しい家だけど、親に守られているという安心感だけは十分あった。
母がこんな短歌を詠んだ。
病むわれを気遣ひ帰り来し子らは遠き日のごと並びて眠る

 大学に行くために町を出た。その日、母は下宿まで付き添ってきた。部屋の様子を見届け、家の主人に挨拶をすると、母は帰っていく。バス停まで私は送った。駅行きのバスが来ると、母は乗り込んだ。それを見届けると、私は振り返ることもなく下宿へ帰った。

 その後ろ姿が、辛かったと母は言う。バスの中で私が悲しんでいるのに、あの子はもう新しい生活のほうへきっぱりと向かっている。振り向いてもくれない。家に帰れば高校生と中学生の男の子が二人待っていて忙しいはずなのだが、それでも巣立っていく長男の後ろ姿がうらめしかった、と母はぼそりとつぶやく。見舞いに行った病院のベッドの側で交わした会話だ。

40年以上も昔のことだ。

早朝の静寂のなかで、来し方を思い、炭太祇の句をつぶやく。
やぶ入の寝るやひとりの親の側

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by yamato-y | 2009-12-11 08:32 | Comments(0)
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