
春愁
竹島問題が起きて、日本と韓国の交流が冷え込んでいる。というより
韓国の憤激がつよく、日本の姉妹都市の提携を延期する都市が続出した。
「冬のソナタ」の故郷春川ですら積極的な日本との交流を避けている。
総合雑誌「世界」の今月号で池明観先生の連載の最終回を読んだ。
1995年にソウルで開かれた日韓知識人会議の美しい光景を回想しながら
幸せなことは長く続かないと、その後に起きた友人らの死、ノムヒョン政権への
思いなどを挙げて嘆いていた。
私はといえば、昨年の冬ソナ現象で夢見た日韓交流が友情年である今年に
入って、じょじょに頓挫していることに嘆息せざるをえない。
池先生とわたしの悲しみを同一視できるものではないが、共感してしまう。
万葉の歌人山上憶良は朝鮮半島からの渡来した人と伝わる。深い知性を
もつその人物と池先生が重なる。というか、先生を見ていると憶良という人物は
こんなヒューマンな人柄だったのだろうなあと想像してしまう。
その憶良と同じ時代を生きた人に大伴家持がいる。「春愁」という気分を日本で
初めて表した歌人といわれる。冬が去ってものみな躍動する春、本来なら
楽しいはずの春が悲しい。華やかであればあるほど、賑やかであればあるほど、
悲しみはいや増すという気分――春愁。
春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影に鶯鳴くも
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