そうだ、京都だ
「お寒うなりましたな」
店の奥から出てきたうどんやのおばちゃんがお愛想を言った。
京極アーケードの入り口にある立ち食いのうどん屋での昨夜の出来事。夜中に小腹が空いたので四条木屋町下ルのホテルを抜け出してきたのだ。店じまいの直前だったらしく客は誰もおらず主も姿がない。そこで大きな声で「お願いします」と言うと、60半ば過ぎのおばちゃんが出てきた。こぶうどん、きつねうどん、てんぷらうどん、きざみうどん、どれにしようか迷う。久しぶりに関西風の薄味のうどんはどれも食べたい。
15日の日曜日、京大で研究会の例会が開かれたので出席した。午後1時開始であったので、朝早く家を出て会場に向かった。「戦争の記憶」という研究会で、関西の諸大学の先生たちや院生が参加している。今回は、沖縄イメージの論考で、3人の力のある人たちの発表だったので聞きがいがあった。
会が終わったあと、私がお世話になっているS先生と百万遍の焼き鳥屋でいっしょに夕食をとる。先生は下戸でかつ自家用車で来ていたので呑まない。この研究会のこれからについてや来年度のシラバスなどについて意見を交換しながら、学生街の焼き鳥を堪能した。8時過ぎ、先生の車で四条の定宿まで送っていただいた。
ホテルに帰って一眠りして、眼が覚めるとすこしおなかが空いたので、のそのそとホテルを這い出て来た。夜になって、京都の町はしんしんと冷え込んでいた。セーターにハーフコートだけの私にはやや寒い。が、きざみうどんをふうふうしながら食べると体がほくほくしてきた。
そのまま腹ごなしを兼ねて夜の散歩。八坂を越えて石塀小路、高台寺あたりまでぶらぶらした。深夜の京の町屋は静かで美しい。路地をぼーっと照らす灯りに誘われて、八坂の塔を越え五条坂まで歩いた。ここには、母ゆかりの教会がある。病と闘う母を思った。帰りは祇園の御茶屋の軒先をとぼとぼ歩き南座まで。年末恒例の「顔見世」の大きな看板が架かっていた。「もうすぐ師走か・・・」
それにしても紅葉の季節の京都は混んでいる。バスは満員、ホテルも予約はとれない、お寺はどこも観光客でいっぱいと大賑わい。ところが、うどん屋のおばちゃんの言では、「去年に比べて、お客さんは少ない。やっぱり不景気なんどすなあ」。
四条大橋を渡ると、鴨川の水が白く光っていた。
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