トイレは座って
昔(といっても10年ほど前)は、上野千鶴子の本を読むと腹をたてたものだが、新刊の『男おひとりさま道』はそうでもなかった。というか、自分の気に入らない章や節はとばして読んだだからだろう。それでも、大半を読んだから、気に入らない部分は全体の5分の一ぐらいかな。
この人と私は同年だから、クラスメートの頭のいい副級長にやりこめられている気分でいつも読む。読みながら、「ふむふむ、やっと溜飲を下げるあんたの時代がきたのね」と憎まれ口をつぶやきながら。
男も女も、定年を過ぎれば同じ弱者になってしまう。ただ、女のほうが潔い弱者で、男のほうは往生際が悪く始末におえない弱者となる。となれば、社会はかわいげのない男老年など排除するにきまっている。というのが、この本のいいたいことかなあ。
いずれにしろ、この本は至るところに男老年の知恵がある。それをいただかない手はない。
そのひとつが、男の小便。洋式トイレで用をたす場合、立ってするか座ってするか。知恵は座ってするとある。
おひとりさま歴15年のすすむさんの声を紹介している。
《掃除もご担当になるおひとりさまのために、周囲を汚さないためには必須の方法です。》たしかに、立ってすれば、「朝顔」からしぶきが飛び出ることもある。当然、便器のまわりは汚れて掃除となるのだから、その手間を省くうえでも座って腰掛けてたすほうがいい。
すすむさんは、この作法から男の生態をみぬいた。《男のコケンとは立っておしっこするようなものだ》
次に心に残った言葉。「人生は壮大なヒマつぶし」。法則があるそうだ。1、時間はひとりではつぶれない。2、時間はひとりでにはつぶれない。1はつぶすには誰か仲間がいること。2はそれなりの技術やインフラがいること。
男のおひとりさまに生きる道はあるか。あるというのが上野のご託宣である。
PPKという言葉を知った。万人の願望だそうだ。ピンピンコロリ、突然死への願望。だけど、死はそんなに簡単にやってこないと上野は冷水を浴びせる。
それにしても上野は文章がうまい。卑俗卑近な言葉遣いでびしばし心にしみ込むような表現と緻密な構成には驚く。
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