10年殺し
昔見た映画に、仕掛人が長い年月をかけて殺す手法を使うのがあった。3年殺しとか5年殺しという必殺術だ。即死をさせずに猶予をおくというのはどういうつもりなのか、幼い私には腑に落ちなかったことを覚えている。
アニ目虫目対談で、養老孟司さんが面白いことを言っていた。仕事ばかりやっている仕事人間をやっていると、心も体も干涸びてしまうことになる。霞ヶ関の官僚たちの悪行は社会保険庁をはじめ次々に暴露され批判の対象となっているが、ああいう場所でああいった仕事のやり方をしていれば、あのような失態は起こすにきまっていると、養老さんは語る。
その一例として、東北のある県庁でささやかれている話を披露した。そこで勤めを終えた職員は、退職した後は腑抜けのようになって10年以内に死亡するというのだ。つまり、10年殺し。
この話を聞いて笑っていられない。
わが職場でも、この県庁と変わらない。いや、もっと短いかもしれない。8年殺しか6年殺しか。
放送局でも、総務や技術の職種の人たちはそうではないかもしれないが、ディレクターや記者など現業の者はとにかく早死にする。私の周囲のディレクターやプロデューサーだった人たちは、70歳の声を聞く前にだいたい死んでいる。現役時代の不規則な生活もかなり祟っているのかもしれないが、なにより、番組を作ったり企画を立てたりすることから追いやられると、途端に生きる希望や目安を失うことによると思われる。
そういう事態にならないためにも、年に一ヶ月ほどまったく仕事を離れた長期の休暇をとって、体を使ったり自然に触れたりする時間を確保するべきだと、養老さんは提言する。
それを受けて、ジブリの宮崎駿さんは。
「うちでも、夏に一ヶ月の休みにすると宣言したんですよ。そして、故郷(くに)に帰ったスタッフは親族から『会社をクビになったのか』と言われたそうです。そればかりか、家にいるとエアコンもなくて暑いから、会社を開けてくれと言う者までいました」と苦笑しながら報告。長い休みを取得するのも才能がいるということ。バカンスをとるフランス人は怠け者ではなく、才覚のある人たちなのだ。
宮崎さんはひとつの映画を作り終えると、半年ほど八ヶ岳の山荘にひとりでこもるとか。テレビも新聞もまったくないところで半年。私ならできないが、たいしたものだと思う。養老さんは虫取り。ゾウムシという甲虫を求めて、日本はおろか海外まで出かけていく。こんな楽しい話が、10月24日の教育テレビで放送される。題して「こどもたちへ」。
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