虫眼、アニ眼
昨夜も遅くまで編集室にいた。午後2時から始まった試写は3時半に終わり、それから話し合いとなった。番組の前半が判りにくいという指摘があり、どうやればクリアできるか関係者全員で協議した。一応の方針が出来たのが5時。ここで、局のプロデューサーたちは退出して、番組スタッフだけでさらに具体的編集について議論。小生は6時から人と会う約束があったので、午後8時まで席を外す。その前に荒い編集方針を決めておいて、そのカタチを8時までに作っておいてと言いおく。
8時、試写再開。9時半まで新しいバージョンを見る。おおむね話は遅滞なく流れたかと思う。筋が通ったということ。このやりかたで行けそうだと目処がやっとついた。次回の局試写は月曜日の夕方。残り30時間の間に必死で作り替えをやらなくてはならない。だが、番組の尺が90分と長く、一度見るだけで1時間半かかる。3回見れば、アッというまに5時間ちかくになる。編集するというのは時間との闘いとなる。
そもそも、養老孟司、宮崎駿という当代の売れっ子が二人議論するなどというトピックはめったにあるものではない。過去二人は数回にわたって対談しており、「虫眼、アニ眼対談」として出版されてもいる。今回、初めて聴衆を前に公開の対談となった。その機会を得て、われわれも番組化に取り組むことになる。
二人の話はマンガ、アニメ、ゲームといったサブカルチャーについてであるが、すんなりその話にならないのが達人たちの「才能」。話頭は保育園、ゾウムシ、京都/鎌倉、男はつらい/女は元気、と縦横に広がって行く。詳細は番組を見てほしいが、ひとつ心に残ったことを記しておこう。
実は、二人とも最近保育園、幼稚園の園長、理事長になっている。こどもの”教育”ということに関心が深いのだ。宮崎さんの保育園とは、会社ジブリの従業員の子弟のためのもので、17人の園児が通っている。ここの建物、施設は家のなかに土のタタキがあったり、地下に降りる深い階段があったり、園庭には小山があったり、それはそれは不思議にして厄介な空間となっている。いわゆる子供にとってやや危険な作りになっている。だが、一人として高い階段から落ちたり、池で溺れたりするようなことはない。子供は親や保護者が手を出さなければ、おのずと身体性を獲得するものだと宮崎さんは話す。
一方、養老さんは毎年夏にはこどもたちを連れて虫取りに出かける。ゾウムシの研究で知られるムシ博士でもある養老さん。しかし、現場でムシの取り方などはこどもたちにいっさい教えないとしている。どうやって取るか、自分で考えろと放り出している。
こんな話のあと、宮崎さんが矛盾した話だがと切り出す。若い母親から子供が「トトロ」が好きで年に何百回となく繰り返し見ているという手紙が来た。宮崎さんは困ったなあと思う。そんなもの、年に一回で十分。それより土の上を裸足で歩いたり、夕焼けの美しさを発見するほうがずっと大切と説くのである。あたりまえの話かもしれないが、この二人が語ると説得力がある。
この対談は、まず10月24日に、教育テレビで放送される。少しずつバージョンを変えて、正月の元日、2日に総合テレビやハイビジョンで放送される予定だ。
今、一番悩んでいるのは、この番組のタイトルを何てしようかということ。
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