漫画家志望
今回の集中講義に出席している3回生のMくんは漫画家を志望している。前期の映像制作実習でも積極的に参加していたのだが、その真意を聞くと、将来漫画を描くための参考になればと思って映像実習をとったという。この大学で漫画家を志望するということ自体が珍しいが、なにより表現ということにこだわる姿勢に好感をもつ。
明日、特別講義でちばてつやさんが来学されることを、Mくんは楽しみにしている。その日のためにこの半月徹夜して漫画を20ページ描いたという。ちば先生に見てもらいたいと思っていると私に告げた。夕方のことだ。
「そりゃあ無理だよ。明日はスケジュールがいっぱいで、かつちば先生は日帰りで、そういう時間はとれないよ」と私が言うと、Mくんは泣きそうな顔になる。
ということで、彼がなぜ漫画家を志望するかという話を聞きながら、夕方ビールを飲むこととなった。
三河の岡崎出身のMくんは高校2年のときに友人の影響で、自分の人生は漫画を描くことと決めたそうだ。以来、漫画を描くために文学部で歴史を学んでいる。「どういう漫画を描こうと思っているのか。」
サルバドール・ダリの超現実的な世界、フロイトの説く夢の世界、そういうものを彷彿とさせるような不思議を描きたいという。変なことを考える漫画家の卵だ。
だが漫画に対する情熱は人一倍強い。よい漫画を描くために、来年は休学して演劇に1年間打ち込もうと考えていると、目をきらきらさせながらMくんは語る。
「きみは、今いくつだったっけ」
「ハタチです」きらきら。
「恋人はいるの」
「遠距離恋愛。東京に3歳年上の彼女がいます」きらきら。
「彼女は何やってんの」
「東大でイタリアの国語論をやっています。地方語でしかなかったフィレンツェの言葉がなぜ標準語になったのかを学んでいます。将来研究者をめざしています」きらきら。
「ふうん」
「研究者と漫画家では、ぼくたち金持ちになれないねって、彼女と言っています。でも、そんなこといいのです」きらきら。
「あのさ、明日、ちば先生の迎えに京都駅までぼくと一緒に行ってくれる」
「よろこんで」きらきら。
Mくんはなかなかハンサムでもある。
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