母の短歌を整理して
ふるさとに帰っている。母の具合がよくない。いろいろなことを相談するお盆となった。
10年以上独りで暮らしてきた母もその生き方を大きく変える時期が来たのである。
母はそのくらしのなかで短歌を作ってきた。父の死後、平成11年から始めた短歌が相当量溜まっていた。ひとつは、「信徒の友」に投稿し、もうひとつは「NHK短歌歌壇」に出している。そこで入選した作品だけでも三桁の数を超える。最初はたいしたことはないとタカをくくっていたが、10年間途切れずに投稿してきた成果が少しずつ現れたのだ。
その書いた原稿、そして選ばれた短歌の賞状がお菓子の箱に詰め込まれていた。
今日、生原稿を私はパソコンにインプットして整理した。
NHK歌壇に最初に入選した歌、平成11年の作品である。
雪降りてひとり居われに友よりの宅配届きて煮物うれしき
亡くなった父の車がまだ残っていた。その整理のときに作った歌。
ハンドルに亡夫(つま)の手垢の染みたるも拭ひきれずに廃車せんとす
平成12年のことだ。
母には私を頭に3人の息子がいる。それぞれ東京と大阪に住んでいる。
平成13年の9月に生まれた歌。
火の用心大丈夫かと問ひて来る離れて住む息子(こ)の夜更けの電話
この孝行息子はおそらく末弟であろう。
独学であったが、短歌新聞などを読んで母は少しずつ上達していった。歌壇では特選、秀作、入選、佳作に選出されれば歌誌に紹介される。特選は論外だが、17年頃になると秀作をゲットすることも起きてきた。
母の日にプレゼントされし夏帽子遺影の夫に被りて見せぬ
ちょっとしたユーモアが混じっている。感心した。
こうして、歌作ノートを整理していたなかで、私は次の歌が心に沁みた。
いつまでも元気でいてよと言ひくれし孫は帰りゆく五月の風の中
書き写しながら、あふれてくる感情を堪えることができなかった。
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