高岡大仏
北陸本線高岡までもどったのは9時前。金沢行きの特急の時刻まで1時間ある。
行って見たい場所が2つあった。ひとつは高岡古城公園、もうひとつは高岡大仏だ。これは今読んでいる「まんが道」の舞台として繰り返し出てくる場所だ。
8月に入って藤子不二雄Aの「まんが道」全13巻を読み継いでいた。“藤子不二雄(藤子不二雄A+藤子F不二雄)”の伝記マンガで、彼らの高校生の頃から物語は始まり、新進のマンガ家となっていくまでを描いた作品だ。同じ内容ながら、後年に発刊された「愛…しりそめし頃に…」を私は先に読んでいたが、両作品は姉妹編だ。
「愛…しりそめし頃に…」のほうは、上京してトキワ荘に入った頃からの漫画家の卵時代が描かれているのに対して、「まんが道」のほうは高岡高校時代を中心に話が展開する。主人公の満賀道雄は藤子不二雄Aがモデル。その友人才野茂は藤子・F・不二雄が重なる。特に「まんが道」に惹かれるのは、舞台が北陸高岡だからだ。そこの雪のある風土は私の少年時代の思いと重なることが多い。雪の降った朝に高岡古城公園へ行き、将来への思いを吐露する場面、新聞社勤めをするようになって早朝富山へ出勤する途上、高岡大仏を横切って行く場面。マンガでこれほどの味が出るのかと感心するほどノスタルジックな表現だ。
公園と大仏の2箇所回っていたのでは列車の時刻に間に合わない。近場の大仏のほうだけ行ってみることにした。徒歩15分と案内板には書かれてある。
カートをごろごろ引きながら閑散とした駅前を行く。大きな交差点で幸福実現党の選挙演説が行われている。誰も聞いていない。たまたま通った私にビラを渡そうとする運動員に私はそっけなく断る。
日本3大仏のひとつと聞いていたので期待していた。ところが、――
たいしたものではなかった。鋳物の町、高岡のシンボルのような観光仏にしか思えない。藤子不二雄Aのマンガでは風情があるのに、現実の大仏は牛久大仏や東京大仏とよく似た弛緩した表情にしか思えない。やはり、これは藤子不二雄Aのふるさとを思う熱い思いに私が幻惑されたのだろうか。
高岡へやって来る季節を間違えたようだ。やはり冬の、立山颪が吹きすさぶような時期を選ぶべきであったか。
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