ハルキを読んで、手拍子打って
今朝は秋のようにひんやりしている。天上で何があったか知らないが、ひとまず下界のぼくらにはありがたい。どうやら真夏の女王は育児休暇をとったようだ。
…なんて、変な表現をやってしまうのも村上春樹を昨夜から読み継いでいるから、誇張したジョーク文体にまいってしまったに違いない。
200万売れたということで話題になっている『1Q84』を読んでいるわけではない。大磯図書館で借り出した「短篇選集1980~1991 象の消滅」を手にしている。これはニューヨークの編集者が編んだ本らしい。巻頭にクノップ社の編集次長という人物がまえがきを書いている。それによると、
「驚異的なハルキの才能は、国境を越えても揺るぎなく」だそうだ。
この選集はどれも不思議なユーモアに満ちているが、なかでも「ファミリー・アフェア」が面白い。ハルキという人はなかなか助平で嫌味な人だと思い知らされる。それだけなら日本の中年作家にいっぱいいるはずだが、小説内の街角、路地やアパート、台所に風がすうすう吹き抜けていて凡百の中間作家たちと文体の湿度がまったく違う。乾いていて痛くて気持ちがいい。
「ファミリー・アフェア」は、設定に親近を感じる。23歳の就職したばかりの妹と5歳ほど年長の広告部に勤める兄が同居していて、妹がその兄批判をするという設定は、ほぼ私の息子と娘の関係に似ているからだ。二人で口げんかすればこうなるだろうと、そのリアリティと屈折した愛情に思わずホクソエんでしまう。昭和初年に流行ったユーモア小説と呼びたい気分の小説だ。
ハルキの小説は「係り結び」の意識が希薄だ。たいていの小説は(特にミステリーや警察小説)、物語の初期で伏線を張ったら、必ず後期で回収する。しないと、話が宙吊りになって未熟と評価されるから、ほとんど強迫的に物語を閉じる。
ハルキはまったく頓着しない。話の破れ目があろうと、ある気分が保たれているなら、「別に…」と言ってホッタラカス。だんだんハルキの世界にはまっていく。
次は『ダンス・ダンス・ダンス』か『海辺のカフカ』でも読もうかな。
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