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キャメロン

キャメロン

研究会の1時までずいぶん暇があった。朝10時に四条木屋町の定宿を出てからどうしようかと迷った。街を歩きながら行き先を考えることにした。四条大橋を渡り、南座を横目に見て、八坂神社の前に出た。1週間後に祇園祭りの巡行が行われる山門には飾り付けと社参の日程が大きく張り出されてあった。神社の前の観光案内板でどこへ行こうかしばし迷った挙句、東山通りを上がっていくことにした。少しでも大学のある百万遍に近づくことにした。知恩院そばに流れる白川あたりを散策しようかなと思いついた。

東山から流れ込む清流白川は三条東山あたりでは町家の軒下を流れる。ほとりに明智光秀の首塚もある。11時を回って、だんだん暑くなってきた。白川のなかに子供の姿がある。男の子がタモをもって川中でフナを追いかけていた。

川から少し離れたら道に迷ってしまった。うろうろしていたら、いかにも京都の町屋らしい小路に出た。明治の建物で立派な駒寄のついた玄関が目に入った。小さな看板を読むと、「並河靖之七宝記念館」とある。落ち着いた渋い雰囲気の入り口に惹かれて敷居をまたいだ。入場券窓口の女性が、ひっそりと立っていた。「いらっしゃいませ。お荷物は置いたままで見てください」という声に促されてキャリーバッグを預けて、館内の順路通りに歩くことにした。この建物の主は明治初期に七宝焼き物で活躍した並河靖之という人物。初めて知る名前だ。ここでもらったパンフレットによれば江戸末期青蓮院の親王につかえた人物で、お雇い外国人から指導を受けながら、新しい七宝の技術を開発したとある。明治の頃に国際博覧会などに出品して評判をとった名人らしい。

町の個人記念館らしくこじんまりとして落ち着いた雰囲気だ。七宝の焼き物が陳列してある部屋が2棟だけ。あとは七宝を焼いた工房が一棟無愛想に公開されているだけだ。人影はまったくない。
七宝もなかなかいいのだが、この館の素晴らしさはなにより庭園にあった。
敷地はそれほど広くないが、中央に池があり、その周りには名石がさまざまな形で並べられている。灯篭が3つほど木下闇に潜んでいる。池の水が澄んでいるのは琵琶湖疏水を引き込んでいるからだ。滝の流れる音だけが庭園に響いている。この庭を造ったのは明治の庭師小川冶兵衛。彼の代表作のひとつがこの地らしい。ゆったりと繊細に造形された庭園は見ていて飽きない。
私が気にいったのは、この美しい池に乗り出すようにして建てられた高床の縁側のある座敷である。沓脱石を踏んでその部屋にあがった。ショルダーバッグを放り出して、縁側にどっかり胡坐をかいた。ガラス戸越しに見下ろすと、真下に池がある。澄んだ水底に日があたっていて大きな鯉の影が美しい。時折、水面にアメンボが動き回ると、アメンボの四肢の影は大きく膨らんで揺れる。鯉のそばをフナの群れが通り抜ける。その魚の影がサインコサインの曲線のように流れていくさまにはうっとりとする。夢のようだ。いつのまにか、私は眠っていた。
そばに誰かが座った気配がした。
薄目をあけると、帽子を深くかぶった女性とサングラスをかけた金髪の男性がいた。英語を話している。女性のほうが庭に関心があるようで、身を乗り出して池を眺めている。真夏の太陽が中天にある。滝口からの水音が響いている。5分10分と時は経っていくがいっこうに隣りの二人は席を立たない。
「スピーク イングリッシュ?」と突然女性が私のほうを向いた。あいまいに私は苦笑した。この池の水はなぜきれいなのか、知っているかと尋ねてきた。疎水の一部を引き込んでいるからだとひどい英語で答えたら、じっと私を見つめながら大きくうなづいた。ブルーの深い瞳にどぎまぎする。まぶしい。
(――どこかで見た顔だな)
「日本の庭園はとても好き。なかでもこの庭は初めて来たけれど最高だわ。」帽子の脇からこぼれる金髪が、発語するたびに揺れる。
私は庭の入り口にある藤の木の鉢植えを指して、「あの木の花のイメージを、この家の主は大切にしたらしい」と伝えた。並河が七宝の文様に美しい藤の花を多用していたのを、陳列で見て知っていたから、少し知ったかぶりをしたくなった。女性は身を乗り出してくる。(――見覚えがあるということは、ハリウッドの女優かな)

なんとなくいい恰好をしたくなった。調子に乗って、私は藤の花は恋の花とも呼ばれると、さも日本の美の神秘を明かすかのように、藤娘の一節をおごそかに告げた。
「なぜ?」彼女はけげんそうな顔をしている。
藤花は“いとし”と描くから。こんなような意味の英語を私は作文して口にしたが、私の英語がひどいのか、何を言っているのか意味が分からないようで、ブルーの瞳は首をすくめるばかり。
ラブアフェアーを日本語では「いとし」という。この「いとし」を書き換えると「い十(と)し」になる。このとおりに字を描いてみると、藤の花房が出来上がる。
ということを、バッグからノートを取り出して実際に、私はアメリカ女性に説明した。
まず、ひらがなで、「い」を十個縦に並べて書いて、その真ん中に長い「し」の字をいれると藤の花房になる。つまり、い十しである。
四苦八苦の末、ブルーの瞳に伝えた。そして、ようやく、判じもののようなこの話を理解したとき、彼女は大きな目をさらに大きくし、その後にっこりした。

この京都という町にはいろいろなエスプリやポエムが堆積しているから、調べてみると楽しいと思うよというと、どんな詩人がいるかと聞く。私は蕪村を教えた。
そして、「うつつなきつまみごころの胡蝶哉」をノートの切れ端に書いて渡した。日本語とローマ字で表記したものの2つを並べて書いておいた。

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by yamato-y | 2009-07-12 18:30 | 登羊亭日乗 | Comments(1)
Commented by 葱男 at 2009-07-13 07:27 x
お久しぶりです。
いつぞやは「め組」で楽しい時間を過ごさせていただきました。

登羊亭さん、今、京都に来ているんですか?
なかなか楽しそうな、お仕事ですね!(^0^)
記念館ではキャメロン・ディアスに遭遇ですか!!

ところで明後日の宵々山の15日(水)ですが、百万遍知恩寺の「手作り市」に「月下村工房」から「手描きTシャツ」の店を出しています。

もしまだ京都滞在中でしたら、是非一度、覗いてやって下さい。
店は朝の8時から夕方5時頃までやっています。

どうぞよろしく!
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