広縁に寝転んで
実家(さと)に帰った日曜日。9時過ぎに起き出してくると、母は教会へ出かけたらしく姿がない。朝ごはんの支度がしてある。
久しぶりに福井新聞を読む。全国紙と違って、自分の見知っているようなことが記事になっていて面白い。かつて私が通った中学が隣町の中学と合併するという記事が出ている。私の頃は1学年500人、全部合わせると1500人ちかくいたと思うが、今では全校で500人しかないという。少子化の波は急激に大きくなって、田舎ではかなり深刻な状態になっているようだ。
“へしこ”をレンジにかけて少しあぶったものを、熱いごはんにまぶして食べる。このおかずだけでごはんが2膳食べられる。朝から食べすぎだと分かっていても、へしこごはんはうまい。へしことは越前若狭地方に古くから伝わる保存食品で、鯖の糠づけのこと。とにかくしょっぱい。塩分の塊のようなもので、食べているうちにあまりの辛さに汗が吹き出るほどだ。血圧の高い私には禁断の食べ物だが、故郷(くに)に帰ったときだけ内緒で食べる。これを食べて、食後に降圧剤を飲んでいる。サッチャ・フールアズアイ
腹がいっぱいになったところで、縁側まで行き、広縁に寝転ぶ。外は暑そうだが、縁側には涼しい風が時折吹くからここちよい。中学生の頃愛読した文庫本を手にとって読む。『半七捕物帳』、昨夜ケーブルテレビでひばりの「雪之丞変化」を見たこともあって、時代小説に手を出した。だが10分も経たないうちにうつらうつら。手から本を落として慌てる。
裏の川で昨夜蛍を見た。母が言うには8時半から9時15分の間にしか出ないというのだが、松本人志の「すべらない話」の終わりのほうで見に行ったから、10時近くになっていたはず。
蛍が2つほど弱弱しく飛んでいた。川といっても灌漑用の流水なので、流れは早い。その水面すれすれをぽーっと灯りをともして2匹の蛍が飛んでいた。「蛍川」という映画はよかったな。
広縁でごろごろするのは気持ちいい。甘いものでも食べたくなった。冷蔵庫をのぞくと、アーモンドグリコが20個ほどあった。一個食べると、尾を引いて全部食べてしまう。冷蔵庫の上に昔から使っている白板があって、そこに娘の描いたコロコロコロスケの漫画が残っていた。今から10年以上も前の画が消えかかりながらある。小学生の娘がそこでにこにこ笑っていた。
少し、「斜陽」の勉強でもしておこう。京都のブックファーストで買った『心映えの記』(太田治子 1987年)を読み始める。若い女の虚栄を描いているが、全然嫌な感じがしない。むしろ正直な告白にどんどん引き込まれていく。
気がつくと、風が止まっていた。汗がふきでる。
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