ザ・レスラー
話題の映画「レスラー」を見た。主人公のレスラー、ランディを演じるのは往年のワル男ミッキー・ローク。とても彼とは思えないほど顔も体も大きく変わっている。ローク自身、ボクシングの後遺症と整形手術を繰り返した結果がしっかり見てとれる。
かつて人気レスラーだったランディだが、現在はアルバイトをしながら、辛うじてプロレスを続けていた。離婚して、現在はトレーラーハウスで一人暮らし。その家賃すらも滞りがちだ。一人娘のステファニーがいる。別の家で暮らしている。幼い頃の辛い思い出が、ステファニーの心を頑にさせている。今頃になってランディは娘への思いをつのらせている。
ある日、試合直後に、心臓発作を起こしてしまい病院に担ぎ込まれる。長年のステロイド使用が祟ったのだ。そこで医者から、ランディはリングに立つたら命は保証できないと宣言される。
退院したランディはプロモーターたちに引退を通告する。スーパーの食品売り場の売り子になって日銭をかせぐようになる。みじめな思いをすることも少なくない。
せめて娘とのきずなを取り戻そうとアプローチを計る。一度はうまくいくのだが、次の約束をすっぽかして娘から絶縁を宣告される。情けないランディ。さらに好意をもっていたストリッパー、キャシディにも振られてしまう…。泣きっ面に蜂状態だ。
ところでキャシディを演じる女優はうまいが、この役どころというか役まわりというか、中途半端な気がした。もっと彼女のからみを入れて、不在の前妻との出来事を浮き彫りにするところまで描いてほしい。
ブキッチョななランディは仕事もプライベートもやることなすことがちぐはぐとなっていく。自棄を起こしたくなるようなことがいくつも重なり、ランディは再びリングに起つ事を決意する。そんなことをすれば当然心臓への負担は大きく、最悪のこともありうる。それを覚悟でランディはリングに向かうのであった。対戦相手は盟友「ジ・アヤトラー」というレスラー。凶悪な技をくりだしながらアヤトラーはランディの体を気遣うのだが、ランディはけっして試合を終わらせようとしない。やがて彼はコーナーポストに立ち、マットに向かって跳ぶ・・・
よく出来たB級映画だ。「チャンプ」とか「がんばれ元気」とか「ロッキー」のような作品をかき混ぜた作品。手持ちカメラ主体で、ざらざらした画面はリアルで、テンポのある編集もうまい。音楽の出し入れもにくい。役者もそれぞれいい。だけど、これがベネツィア映画祭グランプリの作品といえるほどのものだろうか。プロレスの内幕をここまで暴露したことは認めるが、物語は通俗に流れやや平板なのだ。あと2つほど「イベント」が欲しい。
それにしてもプロレスがショーだという論をエンカレッジする映画だ。知識では知っていたが、カミソリで額を自傷する行為などは、実際に画面で見せつけられるとショックだ。流血王といわれたレスラーはたいがいこういうことをやっていたのだ。とすると、大仁田とかアントンなども例外ではあるまい。それとステロイドを打つレスラーはリアルだ。ロードウォリアーズなどはきっとこうやって体をビルドインしてきたのだ。などとプロレスファンには腑に落ちることばかり。
先日の三沢の死とこの映画が重なる。きっと、46歳のレスラー三沢の心身はぼろぼろだったに違いない。
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