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懐かしくて淋しい

ジローさん

山科の疎水のほとりに、私が新米だった頃の上司にあたるジローさんが住んでいる。昨年、大学の帰りにそこを訪れて20年ぶりに旧交をあたためた。ご夫婦ともども、私の訪問を喜んでくれたので、その味が忘れられず今年も訪ねることにした。

烏丸御池の京都マンガミュージアムで杉浦茂展を見たあと、1時過ぎに地下鉄で山科まで行った。京阪山科駅から歩いて5分ほどの山際にお宅はある。不案内でうろうろしていたらジローさんの妻トヨコさんとバッタリ出会った。ジローさんは作務衣にたすき掛けというイデタチで現れた。すっかり料理人だ。どうやら、私のために美味しい魚を用意していただいたようだ。恐縮しながらも、せっかくの手料理と、私の箸もつい伸びる。おまけに、とっておきのシャンペンも開けていただいたとなれば、杯を重ねないわけにはいかない。したたかに酔った。

ジローさんは、わたしが仕事に就いたときの最初の上司である。今から39年前のことだ。関西独特のユーモアをもった人で、桂枝雀のような鋭敏さと鶴瓶のような茫洋とした振る舞いの2つを併せ持ったような人物だった。とらえどころのない人というのが、私の最初の印象だった。
16年前にジローさんは54歳で早期退職を選び、その後悠々自適という人生を送っている。今年古希をむかえた。早く辞めたのは、大学院に入りなおして経済学を学びたかったからだという。4年ほど彦根のキャンパスに通ったが、卒業した後もキャリアアップして職につくというようなこともなかった。ジローさんにとっては学ぶことも快楽であったようだ。巷を低く見て、悠々と人生を生きている。現代の高等遊民というか隠遁者というか。この人は人生の達人だと、かねがね密かに尊敬している。

とにかく、どこへ行ってもどんな状況にあっても、この人は退屈という言葉と無縁の人だ。じっとしてはいない。何かかんか新しい関心や主題をみつけたり、遊び方を工夫していく。かといって金のかかる道楽にふけるわけでもない。京極にある名高い銭湯桜湯に一日中つかっているとか、池坊女子大の単科専修に潜り込んで「お茶」を習うとか。路地裏の赤提灯を見つけてはふらりと立ち寄るとか。老人優待パスを利用して一日中バスを乗り継いだりするとか。ただし、ジローさんの名誉のためにいっておくが、パスの最低保証金を支払ったうえで取得する有料パスを使っての漫遊だということ。
ある飲み屋では「先生」と呼ばれているのよと奥さんのトヨコさんが呆れながら語る。理由を聞くと、その店のために演歌を作詞したからだと、ジローさんはしれっという。

ジローさんと梅田のオフィスで机を並べていたのは、1971年。大阪も景気がよかった。大阪万国博の熱気がまだ残っていたのだ。6時まで仕事をして、仕事がはねると梅田、曽根崎の赤い灯青い灯を飲みまわった。当時、私は神戸に単身で住んでいた。飲んで遅くなると、京都山科のうちへ来ないかとジローさんはにこにこ笑いながら誘ってくれた。こんなサラリーマンの付き合いなんてものは今じゃなくなっているが、当時はまだあった。
そして、ここが肝心なことだが、先輩の家に深夜に突然押しかけるというのは、その家の人にとっては傍迷惑なことだ。その意味で、私は「招かれざる客」だ。酔った勢いで押しかけたものの、ぶっとむくれた先輩の細君の顔を見るということがよくあった。ところがジローさんの家はいつ行っても歓迎してくれた。居心地のいい家だった。
だが、今考えると、梅田から四条河原町まで一人で帰る無聊をジローさんは嫌ったのかもしれない。長い帰路、退屈しのぎにジローさんは私をさそっていたのかもしれない。だが、そんなことはどっちでもいい。当時の私には、清潔な布団と美味しい寝酒と、朝飯にありつくことができ、最高だったのだから。

そんな昔話をジローさんとトヨコさんと私の3人で語っていたら、あっというまに4時間過ぎた。6時前に礼を言って、お別れをした。玄関の門のところまでトヨコさんが見送ってくれた。夕闇が迫る御陵の森を背にして、トヨコさんがぽつんと言った。「楽しかったわ。また会いましょうね。でもいつ会えなくなるか分からないから、会えるときに会っておきましょう」そのつぶやきを聞いたとき、私はどきっとした。そういえば、万年青年だと思っていたジローさんの髪もすっかり白くなり、右側の耳の聴力は完全になくなっているのだ。大学院に通っていたときに、我武者羅な勉強をしたことから難聴となり、今では右の耳はまったく聞こえなくなっている。楽しげに人生を送っているジローさんにも、人生の黄昏は確実に近づいているのだ。

暮れなずむ山科の空を眺めながら、懐かしさと寂しさが交錯する名状し難い感情が私の胸のうちにあふれてきた。

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補遺:ジローさんの演歌の歌詞は以下のとおり
人情酒場 はなさき小唄
♪4時の開店暖簾があがる 早番スタート リタイア親爺
ぐっとぐっと飲み干す ほとけ酒
♪5時の入れ替え 直行直帰 営業マンが業績向上
成果成果を期待 ねがい酒
と、6時ははじけ酒、7時は連れられ酒、8時は癒し酒、9時は旅路酒、10時でがまん酒
♪11時過ぎたら 街の明かりが消えていく マスターとママの
笑顔笑顔が映える 仕舞い酒
by yamato-y | 2009-05-25 00:53 | Comments(0)
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