さよならを言う前に
『さよならを言う前に』という曲について3年ほど前に書いたことがあった。1969年当時のカレッジポップスで私は大好きだったのだが、その後埋もれてしまった名曲だ。誰か知っている人はないだろうかとブログに記していたこともすっかり忘れていた。なにげなく、先ほどその記事をたどったら、そこにコメントがあって、小林啓子という人が歌っているとあった。その名前で検索したら、この小林さんが2007年当時に、30年ぶりにアルバムを出し、そこでこの歌が収録されていると分かった。明日、レコード屋(ちょっと古いか)へ行って、調べよう。渋谷のHMVだったら分かるかもしれない。
あらためて、そのアルバムのなかに収録されている歌詞カードを読んだ。
♩さよならを言う前に もう一度、想い出して 雨降る春の夜 いつか傘も捨てて
涙ぐみ、交わした 初めてのくちづけ このまま、こうしていたい いつも、いつも、いつも
どんな時でもと 誓ったあの言葉 10時の鐘の音を そっと、聞きながら
あれから夏も過ぎ 今もう冬なのに くちづけしてきた二人 たとえ逢えなくても そのまま、そっと名前を呼びながら
10時の鐘の音を そっと、聞きながら
♬さよならを言う前に もう一度、約束して 遠い国へ行った いつまた逢えるやら
手紙さえ書けない 旅がつづこうとも お願い、忘れずに きっと、くちづけして
あなたの中の私の面影に 10時の鐘の音を いつも聞くたびに いつも聞くたびに いつも聞くたびに
「あれから夏も過ぎ 今もう冬なのに」というフレーズは歌詞、曲ともに実に美しい。大げさかもしれないが、小林秀雄訳のランボーの詩「別れ」を思う。
もう秋か。――それにしても、何故に、永遠の太陽を惜しむのか、俺たちはきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、――季節の上に死滅する人々から遠く離れて。
この歌の作り手を見て驚いた。
作詞は藤田敏雄。たしか、『若者たち』の主題歌「陽はまたのぼる」や岸洋子の「希望」の作詞者でもあったはずだ。和製ミュージカルの草分けのような人物だ。そして作曲はあの中村八大 だ。道理でメロディが美しいはず。「上を向いて歩こう」だけでなく「黄昏のビギン」「娘よ」「遠くへいきたい」「いつもの小道で」など数多くの名曲を残している。中村八大氏は、ここ数年私にとってもずいぶん近しい名前となっていた。一つは、植木等さんとご一緒したドキュメントで聞いた、伝説のピアニストだったこと。もう一つは、あのトキワ荘の寺田ヒロオさんとの関係だ。寺田さんの奥さんが中村八大氏の妹さんだったのだ。そういう縁もあって、この「さよならを言うまえに」は忘れられない曲になりそうだ、私にとって。
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