新学期が始まった
朝、往来から子どもの泣き声がする。
「ヤダ、ヤダー。行きたくない」男の子の声だ。
ベランダから下を覗くと、父親とおぼしき30代のスーツの男性と、黄色いカバンをかけた4歳ほどの男の子がいた。
どうやら、保育園に父は連れて行こうとしているのだが、入ったばかりで園になじめない男の子が行くのを嫌がっているらしい。
おそらく、夫婦共働きで、お母さんはもう出勤したのだろう。出社の遅いお父さんが連れていくことになっているらしい。お父さんも、子どもを送った後に会社へ向かうからスーツに着替えている。早くしないと、自分も遅刻するかもしれない。お父さんは少し苛立っている。子どもの泣き声はますます大きくなる。
お父さんは少し大きな声を出した。
子どもはおびえて、そしてまたおお泣きをはじめた。
そんなにイライラしなくてもいいのに、と子育て終了した私はムセキニンに思う。
私も、子どもが1歳のとき、同じ体験をした。そして、イライラした。テキパキと裁きたい私の意に沿わない子どもの態度に本気で腹をたてた。
ぐずる子どもを無理やり自転車の前に乗せて、強引に保育園をめざして走った。
走っている間中、子どもは泣いていた。
今だったら、会社に遅刻したってかまわない。出来れば、会社を休んでいっしょにいてやろうという気にもなる。
でも、30年前の私はその余裕がなかった。
下で、互いににらみあっている父と子の姿が、いじらしく思えた。
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