早春の嵐
朝のうちは光があって、鶯が鳴いていた。いい日曜日だなと思って、再寝して目が覚めると小雨が来ていた。風がひどい。轟轟と鳴っている。
昼過ぎ、雨が小止みとなり山を降りて大磯図書館へ本を返却しに行く。期限が1週間ほど過ぎていたのだ。今日は返すだけにして借りずに帰ろうと思ったが、つい書架をのぞいてしまった。
そして借り出した本。『妖花』(半村良)、『持統女帝と皇位継承』、『鶴見和子を語る』、『カバラ』、『自足して生きる喜び』(中野孝次)、『忘れないでね、私のこと』(内館牧子)、『歴史認識を乗り越える』(小倉紀蔵)、『エトルリア人』、『ポスト戦後社会』(吉見俊哉)、『一年有半』(中江兆民)。
普段、自分でお金を出して買わない本や縁遠いジャンルを、できるだけ図書館で借りるようにしている。
1時間ほど、図書館に屯してから、帰路につく。
ツヴァイク道はすっかり春の貌になっていた。木々の梢には芽が吹き、葉が茂っている。根方にはぜんまいの葉が大きく腕をもたげている。むらさきはななは可憐な花をあちこちに見せ、タンポポは力強く咲いていた。
海から吹いてくる風が轟轟と鳴る。潮を含み、そこに草花の匂いがまじって、春らしい嵐となる。強い風が背中を押し上げてきて、気持ちがいい。どこかで見た風景だ。
「風の又三郎」だ。50年ほど前に見た大映映画の一場面。
「どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう」
というような歌を又三郎は歌っていたはずだ。
黒いレインコートを着て、右手に本をつめたディズニーバッグ、左手にこうもり傘を振り回していると、へっぽこ先生になった気分で、私は又三郎の歌を口にする。へっぽこ先生とは川上澄生の版画に出てくる主人公。昔、サントリーの宣伝で使われていたことがあり、その後『銀花』で特集を読んでからすっかり好きになった。
紅葉山の台地まであがり、ぶらぶらと我が家を目指す。それぞれの庭には白や黄色の花が咲き乱れている。白く大きな花は辛夷か。
わが庭を外から見ると、水仙が4,50本咲いている。こでまりのような白い花もある。桃木には青い芽がびっしりと並んでいた。雨があがって、からすが鳴いている。
静かな、日曜日の昼下がり。
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