イタリアの旅5 ベネツィア1日目
私がベネツィアと出会うときはいつも雨だ。前来たときも春先の冷たい雨が降っていた。
今回も、雨は冷たく風も吹いている。アドリア海に注ぐ運河も波立っている。
今日から3日間宿泊するはホテルの名前はアッランジェロ。天使館とでもいうのだろうか。サンマルコ広場のすぐ側、有名なため息の橋の一本上の橋のたもとにある。とおりからはホテルとすぐ分からないほど小さな間口だが、中へ入ると広くて立派な設備のホテルだ。部屋は5階建ての502号で最上階となる。時分どきになるとサンマルコ寺院の鐘が鳴り響きうるさいぐらい近い。
しかし雨はあきれるほど降り続いている。夕方の4時半には霧のような細かい雨であったが、夕食の頃になると本格的に降りだした。到着した早々だが、サンマルコからリアルト橋までの一角だけ歩きたくなった。ハンフリー・ボガードを気取って傘なしのトレンチコートで歩いたらすっかりずぶ濡れになった。この一帶の通りは有名ブランドやベネツィアングラスの店が並び、裏通りにはリストランテがあちこちに看板を出している。といってもリストランテは7時ごろにならないと店が開かない。それまで、広場の端の波止場まで行き、横殴りの雨にうたれながら、どぶんどぶんという大きな波の音を聞く。
雨のベネツィアは嫌いではない。路地の湿気った感じは荷風の墨東を思い起こさせるし、店先の明かりに映し出される観光客の青ざめた顔を見るのも悪くない。なにより雨で水路の水が揺れ、町の灯がうるむことを気にいっている。
夜7時、ホテルから1ブロック先の予約のいらないレストランに入った。赤ワインをグラスでもらい、野菜スープとラザニアを食べた。野菜スープだけでおなかが膨れる分量のところへ、ちょっとヘビーなラザニアはいささか食べすぎの感あり。
写真撮影20枚。ビデオ撮影25分。
(ここからベネツィア2日目)
今、この記事は朝7時に書いている。朝の鐘が鳴り始めた。サンマルコの鐘は長い。およそ1分ほど続く。窓を開いて、朝の澄んだ空気を入れる。青空がみえる。カモメが昨日より高く舞っている。
本日は8時に朝食、9時にホテルを出てまず銀行へ行って、円をユーロに変えよう。それからサンマルコ寺院の見学とアカデミア美術館の観覧だけ予定を決めておいて、後はなりゆき任せで行こうと思う。このベネツィアで一つだけ実行したいのは、ユダヤ人街ゲットー地区を歩くことだ。この稠密な海上都市のなかでも、それよりもっと過密に閉じ込められた地区がゲットーで、それは周りと隔絶するような形で、塀のなかにある聞く。ヨーロッパ各地にあるゲットの最初が、このベネツィアだったとJTBの現地スタッフが教えてくれた。須賀敦子の文章の影響もあろうが、この目で見てみたいと考えている。
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